記事 三田次郎 2014年10月12日 23:02
カジノ運営の解禁を目指す超党派の「国際観光産業振興議員連盟」(通称カジノ議連)は、10日、幹部会
合を開き、カジノを含む統合型リゾート(IR)の解禁に向けた第一歩となる「カジノ推進法案」について、一部
で報道されたような「日本人除外」の規定は盛り込まないことを確認した。
(10/10 ロイター通信)
総勢135名もの国家議員を擁するIR議連が推進する「カジノ推進法案」が成立するのは時間の問題だと
みられるが、この複雑な巨大利権の在り様を可能な限りわかりやすく書き出してみたい。
@虚像
IR議連がしばしば持ち出すカジノ収入の「年1.5兆円」は、アメリカ「シティ・グループ」が昨年8月に発表し
たレポート、東京・大阪・沖縄の3ヶ所にカジノができた場合の収入見積額年134億ドル〜150億ドル、を
根拠にしている。
ただし、同レポートに書かれる収入の内訳は外国人客からの収入は約33億ドルに過ぎず、残りの8割近く
は国内の客からの収入とされている。
この見積はかなり甘い。
シティは日本では1260万人のパチンコ愛好者が平均で23万円負けていることを参考に、カジノに年690
万人の日本人が訪れ、一人につき17万負けると試算しているが、各駅前にネオンをきらめかせるパチン
コと全国数か所しかないカジノではアクセスと敷居の高さがまるで違う。
外国人客のおとす33億ドルも甘い。
これは日本のカジノで年830万人もの外国人が遊び、400ドルを負けてくれてやと達成できる数字だが、
訪日外国人が1千万強の日本では半数以上の観光客がギャンブルに入り浸る計算になる。
(因みにゴールドマン・サックスの見積もりも年1.5兆円だが、投資銀行のCLSAなどは日本全国12ヶ所
で4兆円と試算している。)※1
IR議連はカジノ単体の収入の他、飲食や宿泊への波及効果を期待しているが、これも甘い。
(例えば、大阪商大アミューズメント産業研究所の試算では大阪府の税収が83億1千万円とされている。)
2010年に発表されたアメリカ・ニューハンプシャー州の「ゲーミング調査委員会報告書」によると、カジノ周
辺地域から購買力が奪われ、既存産業の淘汰と税収減をもたらす「カニバリゼーション」の発生が認めら
れるとし、カジノを開業すれば周辺地域から40%から60%の「消費の置き換え」が起きると推計している。
※2
さて、こういった甘い見積もりを逆転させる手段がないことはない。
ターゲットを富裕中国人に絞る方法だ。
現状、世界大手の米系カジノ企業「ラスベガス・サンズ」や「ウィン・リゾーツ」はラスベガスに本社を置くもの
の、収益の約85%はマカオとシンガポールから上げている。
米国内ではカジノライセンスの乱発、オンラインカジノの隆盛により、カジノ市場が縮小する一方、アジア、
特に富裕中国人をターゲットにしているマカオは絶好調で、カジノ全35軒の昨年の収入は日本円で約4.5
兆円に達する。(一方、ラスベガスは約40軒で6000億円に過ぎない。)
彼らは日本を第二のマカオ、「ラスト・フロンティア」と見立て、参入の機会をうかがっている。
そして、彼らの参入とともにプロジェクト・ファイナンスなどで投資銀行が絡んでくるのも間違いない。
※2014年10月15日時点で一般公開が確認出来た記事を引用しました。関連情報は元サイトでどうぞ。
BLOGOS
http://blogos.com/article/96383/