労働力ダンピングは社会を豊かにするのか?――辻 元
http://agora-web.jp/archives/1530674.html 東洋経済の「ユニクロ、疲弊する職場」を読む限り、ユニクロは、労働力ダンピングにより圧倒的な競争力を持っているように思われる。
なぜなら売上の約80%は国内で、ユニクロは現在のところ国内中心の企業だからだ。
ファーストリテイリング会長の柳井正氏の言葉:「(社員を)甘やかして世界に勝てるのか」は、正しくなく、「(社員を)甘やかさないから国内で独り勝ちできる」が正しいのだ。
柳井正氏は「ブラック企業」という言葉は、旧来型の労働環境を守りたい人が作った言葉だと思っています。
と述べているが、私には、「労働力ダンピングこそが、成長の源なのです、邪魔して欲しくないですね」と言っているように聞こえる。
小売業や飲食業のように国内市場を相手にした企業で、労働基準法を順守することなく、
労働力ダンピングを行えば、国内の競争では圧倒的に有利になる。
しかし、その結果どうなるか、というと、競争に負けた企業が、市場から退出し、
多くの職が失われる。その上、労働力ダンピングを行った企業からも、どんどん落伍者が出る。
その結果、労働力ダンピングを行った企業の疲弊した職場と、多くの失業者が生み出されるし、
心身を病んだ人も沢山出ることになる。
一方、既存の需要は、労働力ダンピングを行った企業が少ない人員を使って押さえてしまうから、
労働力ダンピングによって、生み出された失業者がありつけるパイは生み出されない。
つまりエネルギー制約、環境制約により、経済のパイの大きさには限界があるために、
労働市場から弾き出された人たちが、新しい仕事をしようにも、彼らに残されたパイは、ほとんど存在しないのだ。
このことは、既に「生産性の上昇が人を幸せにするために」で書いた通りだ