257 :
名無しさん@3周年:
ドアの外でまた声がした。
「斉藤さん、いらっしゃらない様なのでドアの下からお知らせを入れておきます。
いつでも福祉課に御連絡下さい。あの・・私は福祉課の石田と申します」
ドアの隙間から封筒がポトリと落ちた。
「では失礼いたします」
斎藤は耳をすませた。
ここで動いて物音をさせては部屋の中にいる事がばれてしまう。
じゃりっと砂を踏みしめる音がするまで身動きは出来ない。
息をつめてじっとする。
やはりまだ音はしない。
「チョンめ!!!まだいやがるか!!この魂魄の狐神を何だと思ってやがる!!
テメイらチョンこそ日本から出て行くべきなのだ!!」
斎藤の主張通りとすればこの市の職員全員がチョンになってしまう。
それどころか警察も消防も学校も信用金庫も全部チョンだ。
大人も子供も、この街の自分以外全てチョンと言う事になる。
「我の言う事を受け容れないのは全てチョンだ!!」
その言葉が何日も歯磨きをしていない口から凄まじい臭気を伴って発せられる。
漸くして市役所の石田と名乗る男は去って言った様だ。
老朽化が進んだアパートでは誰かが階段を上るとギシギシと音がする。
その嫌な音がして静かになった。