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象徴天皇の憲法上の意味
憲法は国家権力を組織する基本原理を宣言し、その原理に従って一定の機関を創設し、それに一定の
権力を授け、同時にそれを制限する法規範であった。憲法一条は、国民主権の原理を宣言することにより
天皇がもはや主権者ではないことを表現し、天皇という機関は創設するが、それには実質的な権力は
授けず、その権力を無にまで制限することを規定したものである。このことは、象徴という言葉が天皇の
法的地位を表現するために案出された経緯から生ずる帰結である。
天皇に対して「象徴たるべし」と命じた憲法の法的意味は、天皇は実質的な政治権力を
行使してはならないということと解さなければならない。
(「憲法1」第三章 国民主権と象徴天皇制 高橋和之執筆 101頁より)
明治憲法の天皇も日本国憲法の天皇も「象徴」である点では同じであり、両者は連続しているという
理解が示されることがあるが、明治憲法の天皇は政治権力の主体であることによって同時に当然に
象徴でもあったのに対し、日本国憲法の天皇は政治権力を全くもたないにもかかわらず象徴として
創設されたのであり、ゆえに、天皇が象徴であると規定する第一条は、天皇が依然として象徴であることを
確認する規定(確認説)ではなくて、全く新たな象徴天皇制を創設する規定(創造説)と理解するのが
正しい。
(「憲法1」第三章 国民主権と象徴天皇制 高橋和之執筆 102頁より)