資本主義というOSは不具合が多発だ!part19

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20名無しさん@3周年
>>19 つづき

 ではその教訓はなにか。政府の役割である。体制移行は歴史的大事業であり、その遂行には強力な政府が必要とされる。
 ロシアは体制移行戦略において、政府と計画化を同一視し、計画化をやめるために政府そのものの機能を壊してしまった。
 しかし、計画という配分システムをなくせば、すぐ自然に市場が生まれるわけではない。政府は市場を「計画的に」育てていかなければならない。それがロシア失敗の教訓である。

 もう一つは民営化の違いである。ポーランド、ロシアなどでは、市場化と民営化は移行開始5年でほぼ完了した。しかし、ロシアでは、その過程で「歪(ゆが)み」が生じ、移行初期に財をなした投機家が政府に対する融資の名目で国営企業を実質的に私有化した。
 「オリガルヒ」はそこから生まれた。
 一方、中国では、市場化に15年を要し、民営化は事実としては進展していても、国策としては実施されていない。
 ではなにがおこったか。政府と党(の幹部)が国有資産を実質的に私物化するために国営企業を利用し、その結果、金融、貿易、不動産開発、大型プラント等、利益率の高い産業では会社役員の8割以上が高級幹部の子弟ということになった。

 さらにもう一つは体制移行の行き先の違いである。たとえば、中国と中欧において、多くの人々は現在の生活に基本的に満足しており、また自分たちの将来の世代の生活がもっと良くなることを期待する。
 しかし、中欧の人々は政治的民主化を高く評価し、一方、中国の人々は現在の政府と国家を肯定的に受け止め、民主化より経済発展を重視する。

 こうしてみれば、体制移行はほぼ一段落し、さまざまの資本主義が生まれてきたと言ってよいだろう。本書はその経済思想的意義についても含蓄のある示唆をしている。良書である。
(おわり)