>>466 つづき
約束は10回以上
首相はなぜ、それでも5月決着を唱えるのか。「公の場で10回以上は約束してしまった。引っ込みがつかないのだろう」。最近、首相に接した関係者はこう感じた。
難局からの出口は暗闇のなかだ。打開策として、キャンプ・シュワブ沿岸部(沖縄県名護市)を移設先とする現行案の修正を探るが、地元では反対論が沸騰している。
米側も協議には応じるが、日本案への疑問符は消えない。「機能上、話にならない」。今月初めに徳之島などを移設先とした日本案がワシントンに伝わると、米国防総省内では深いため息が漏れた。
普天間問題の漂流は日米だけの問題では済まされない。アジア各国にも不安が広がっている。
先月30日、外務省幹部らが東南アジア諸国連合(ASEAN)の各国大使を招き、昼食会を開いた。外相の経験があるフィリピンのシアゾン大使が普天間問題への不安を吐露した。
「突然、沖縄から米軍がいなくなったらアジアの安定が揺らいでしまう。日米安保体制は日本だけのものではないのです」
中国と南沙諸島の領有権争いなどを抱える東南アジアにとって、在日米軍は安定を保ってくれる唯一の重し役だ。
域内の有力国の安保担当者は「在韓米軍は朝鮮半島に張り付いているし、ハワイの米軍は遠すぎる」と、在日米軍の大切さを訴える。
金正日総書記の後継体制をめぐり、緊張する朝鮮半島でも事情は同じだ。危機が起きれば、沖縄の米海兵隊も急派される。
それだけに韓国の国防担当者らは「わたしたちは普天間問題の行方に関心を抱かざるを得ない」と語り、半島情勢への影響を心配する。
中国軍の急速な台頭や北朝鮮問題がくすぶるアジアでは、日米同盟が欠かせない。首相は「沖縄への思い」を口にするが、なぜ、在日米軍が必要なのかはきちんと説明しない。
目算もないまま普天間というパズルのピースをいじり、アジアの安定を脅かしかねない構図を招いている。
(つづく)