>1694年のイングランド銀行設立に対抗して、土地を基礎とする【土地銀行】
>の設立が多くの論者によって提起された。イギリスでこれら【土地銀行】の
>計画が実現することはなかったが、フランスでは類似のシステムであるロー・システム
>が実行され、短期間で破綻していった。このためにイギリスにおける
>【土地銀行設立論】は急速に後退した。
>また南海泡沫事件の経験は、金融システムは本質的に不安定であるという
>認識を生み出していた。スチュアートの信用論はこうした認識に逆行する
>もので、姿を消した【土地銀行設立論】の復興と見ることができる。
>
>ロー・システム: 財政赤字に悩んでいたフランス政府は、スコットランド出身の
>ジョン・ロー(1671-1729)が提案した新しい通貨システムを採用する。それが後に
>ロー・システムと呼ばれることになる。ローはまず「一般銀行」とルイジアナ開発の
>「ミシシッピ会社」を設立した。政府に働きかけて、一般銀行が発行する不換紙幣
>を納税に使えるようにして、その不換紙幣に流通性を持たせることに成功した。
>次に、ペーパー・カンパニーであったミシシッピ会社の株式を一般銀行に買い取らせ、
>株価を釣り上げていった。買い取った株を担保にして一般銀行は
>不換紙幣を発行してさらに株価を釣り上げていき、他の国営企業も参加にした。
>最終的には一般銀行は紙幣発行の独占権を得て、王立銀行となった。
>不換紙幣で国債の償還を行っていくことを目論んでいたが、ミシシッピ会社が
>幽霊会社同然であったことが広まると株価は暴落し、ロー・システムは破綻する。
>
>南海泡沫事件: ロー・システムが破綻したのと同じ時期にイギリスで
>(略)1711年に設立された南海会社(サウス・シー・カンパニー)の株式は
>国債で購入することが認められていた。政府は中南米と西アフリカ
>開発の特権を南海会社に与える代わりに、国債を引き受けさせたのである。
>(略)
>ロー・システムの破綻とともに、イギリスでの株式ブームも収束する。
>この事件をサウス・シー・バブルと呼ぶ。
>今日の「バブル経済」という名称はこの事件に由来する。
>イギリスでは南海泡沫事件の再発を防ぐために、株式会社は19世紀の後半に
>なるまで議会の許可なくして設立できないようになった。