>リカードウやマルサスなどの地金主義者たちは、イングランド銀行券の過剰発行が
>物価上昇の原因であるとした。彼らの見解によれば、もし金貨が貨幣として
>用いられていたとすれば、一国の経済を動かすのに必要な貨幣の流通必要量が
>存在する。もし、兌換停止後にこの必要量を上回る銀行券の過剰供給があれば、
>銀行券の通貨価値は下落(略)
>イングランド銀行の理事たち反地金主義者たちは、銀行券の過剰発行という
>議論を否定する。彼らは【商業手形の割引によって銀行券が発行】され
>ことを強調した。つまり、民間の経済活動を反映して銀行券の供給量が決定されて
>いると地金主義者に対して反論したのである。反地金主義者の主張によれば、
>物価上昇や為替下落の責任はイングランド銀行にはない(略)
>
>【商業手形の割引によって銀行券が発券】される場合には、割引率(短利子率
>に相当)を変動させることで発券量を調整することが可能である。したがって、
>たとえ銀行券が需要に応じて発行されているにしても、【利子率】を操作することで
>発券量は異なるはずである。さらに言えば、民間への貸付という経路でも銀行券
>は発券されていく。【貸出金利】を操作すれば、貸付による発券量を調整することも
>可能である。つまり、発券量についてイングランド銀行に責任がないとする反地金
>主義者の主張には無理があった
>(略)
>リカードウはこの論争を契機にして、準備金の増減に連動させて銀行券を発行する
>【中央銀行制度】を提案する。
>
>理論的には地金主義者の方がはるかに緻密な議論を展開していた。ただし、資金
>不足に見舞われていた地方銀行に資金供給を行わないならば、信用システム全体が
>崩壊しかねない状況もあった。つまり、イングランド銀行は銀行券の過剰発行を
>余儀なくされていたとも言える。
>(略)
>また、反地金主義者の主張の中には、物価上昇という犠牲を払えば利子率を低く
>抑えることで経済活動を促進できるとする見解もあった。つまり、金融政策による
>不況対策という考え方である。スチュアートにも見られたこのような考え方は、
>19世紀を通じてマイナーな経済学者の間で繰り返されていくが、
>表舞台に登場するのは、20世紀のケインズ