資本主義というOSは不具合が多発だ!part15

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632名無しさん@3周年
18世紀後半の英国で発明された生産技術は、蒸気機関にせよ水力紡績機にせよ、
どれも労働集約的な技術だった。1769年に英国人リチャード・アークライトが発明した
水力紡績機は、1785年に米国人エドモンド・カートライトの発明した、蒸気機関を動力
とする力織機に取って替わられた。しかし、この17年間で実現した生産性の向上は
一次関数で表現できる程度の単純なもの(1.5倍、2倍などの穏やかな伸び)だったから、
紡績業は依然として多くの雇用を生み出し続けた。

18世紀から20世紀初頭にかけての日米欧では、「生産性の向上」はしばしば、
新技術の導入ではなく、労働者に対する長時間労働や賃下げの強制によって実現
された。だから、1872年の日本に設立された富岡製糸工場の労働者の苦しみを描いた
『女工哀史』などというノンフィクション作品が生まれたのである。

カール・マルクスは1830年代にドイツで蒸気機関車の鉄道が開通したのを知って
1848年に『共産党宣言』を書き、英国生まれの喜劇俳優チャールズ・チャップリンは、
1913年に渡米した直後にベルトコンベヤーに追い立てられながら大勢の労働者が
生産したT型フォードを見て、1936年に映画『モダン・タイムス』を作った。

マルクスもチャップリンも「現状が永遠に続く」と思い込んだらしい。
マルクスは、労働集約型の「原始的な」技術を見て「資本家は労働者を搾取する」
と即断したが、それは『モダン・タイムス』の時代が永遠に続くことを前提にした話だ。
今世界中で起きている労働者にとっての最大の受難は「搾取」ではなく「排除」である。

しかし、21世紀の現代人は、マルクスやチャップリンを笑えない。
彼らと同様に、生産性の向上はせいぜい一次関数で説明できる範囲でしか起きない
と思い込み、「新しい技術が発明されれば必ず新しい産業が生まれ、新しい雇用が
生まれ(て古い産業で生じた失業が吸収され)る」という技術神話を信じているからだ。

もう生まれないんだよ、雇用は。
正確に言うと、生まれることは生まれるが、どこかの業界で雇用が生まれても、
その業界かまたは他の業界でそれ以上のペースで失業が生まれるので、
差し引きで雇用は必ず減るはずなのだ。