愛国思想ってすげー恥ずかしい思想だよな

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446 ◆6AjHmogJJlpe
良く、愛国心をナショナリズム(nationalism)って訳すけれど、
言葉の成り立ちを考えると、
愛国心とナショナリズムはかなり異なる。

日本のような国家のことを国民国家(nation state)って言うんだけど、
これは「国民(nation)」に基づく「国家(state)」という意味だ。
要するに、ナショナリズムっていうのは、
直訳すれば「国民主義」。
「国家を構成する国民としての自覚」というようなニュアンスを含む言葉なんだ。
これに対して、国家主義のことをstatismって言う。
国家の側ではなくて、国民の側からの国家への自覚が
「ナショナリズム」であって、国家主義とは正反対の言葉なんだよね。

さて、国民というのも、国家というのも、近代の概念。
近代っていってもピンと来ないかもしれないけれど、
日本で言うとそう、明治以降初めて成り立つ概念ってことになる。
江戸時代以前に「国民」なんていう概念があるわけないから
当然だよね。
ただ、国民と国家の関係は、社会制度に依存するので、
明治憲法下の「ナショナリズム」と、現行憲法の「ナショナリズム」は
全く違うということになる。

明治憲法では、国民は「臣民」であり、天皇に対する臣下だから、
ナショナリズム=天皇に対する忠誠というのが自然な解釈。
大正デモクラシーの時代の話もあるので、
実際には、そんな単純ではないけれど、
少なくとも太平洋戦争あたりでは、
ナショナリズム=天皇に対する忠誠が強調されていたのは間違いないでしょう。
447 ◆6AjHmogJJlpe :2009/09/10(木) 09:07:50 ID:rxBnuWVN
一方、現行憲法における国民―国家の関係は、
言うまでもなく「国民主権」
国民が主体となって政治を作っていくということ。
そして、憲法に基づいて、国民の権利が国家から保証されるというのも、
現行憲法における国民―国家の関係の特徴だよね。
だから、現行憲法におけるナショナリズムというのは、
字義通りに言えば、
「憲法によって保障される社会制度に対する尊敬・尊重の気持ち」
「こうした社会制度を守るために尽くしていこうという気持ち」
ということになる。
もちろん、憲法が完璧ではないし、
細かい社会制度には納得いかないこともあるかもしれないけれど、
その理念を守っていこうというのがナショナリズムだね。

もちろん、現代において、「憲法粉砕!!」を訴えて、
戦前のような社会を目指すナショナリズムがあっても良いと思う。
あるいは、憲法を基準にした国民―国家の関係に疑問を唱えて、
別のナショナリズムを唱えてもいいと思う。
たとえば、戦後の共産党が主張していたナショナリズムは、
国民が共産主義革命への意識を共通して持つことを指していた。
ただ、こういうナショナリズムはひっくるめて言えば、
「革新ナショナリズム」とでも言うべきものであり、
「保守ナショナリズム」は、上にも書いたように、
現行の社会制度における国民―国家の関係を尊重することにほかならないんだ。
448 ◆6AjHmogJJlpe :2009/09/10(木) 09:08:49 ID:rxBnuWVN
ただね。おそらくこういうことを言うと、
自分が言う「保守ナショナリズム」に違和感を感じる人が多いと思う。
それは、なんでって、現代の日本にはこういうナショナリズムが
根付いていないからなんだ。

ぼくたちの上の世代の人、たとえば、中学や高校の先生とか、
社民党や民主党左派の人たちは、
「全共闘」の時代の左翼運動の影響を強く受けているわけだけど、
こういう思想の特徴は、アナーキズム(無政府主義)って言って、
国家そのものを否定することにある。

なんでこんな話が出てきたのかっていうと、
全共闘の時代、日本に民主主義が根付くかどうかという時期で、
あらゆることが「政治的」だったからなんだ。
日本が米ソ冷戦に巻き込まれるかどうか、
アメリカの圧力で議会政治が停止するかどうか、
そういう緊張感があった。
そこで、政治ではなくて個人が大事なんだ!っていう思想が生まれてきたわけだよね。
彼らは、人間が根本的に持っている(とされる)「人権」をもとに、
政府とか政治に対して自分たちを守ろうとした。
これは、個人が国家に何らかの形で貢献しないといけないのが当たり前だった
それまでの時代の思想とは違うもので、
当時としては斬新なものだったわけだよね。
こうやって国家を否定して、それでも自分たちの人権を守ろうという考え方を
「アナーキズム(無政府主義)」っていうんだ。
449 ◆6AjHmogJJlpe :2009/09/10(木) 09:11:39 ID:rxBnuWVN
一方、こういうアナーキズムの流れに対して、
国家を再評価しようという動きが起きて、
それが、現代の保守思想の系譜につながっている。
「新しい歴史教科書作る会」とかは、こういう流れで出てきたものだよね。
ただ、彼らはアナーキズムの影響を強く受けているから、
現在の日本の政治体制を評価しようという方向には行かず、
戦前の日本を評価するという方向に行ってしまう。
要するに、上に書いた「革新ナショナリズム」の一派に過ぎないわけだよね。

それから何十年も経ったわけだけれど、
日本は全共闘以来、次第に、政治思想的の「氷河期」に入っていく。
何でって、日本が高度経済成長期に入って、
誰も政治のことなんか考えなくなったからだよ。
これは感覚としては良く分かるよね。
時代は大きく変わったのに、政治思想は「氷漬け」になったまま、
変化することなく現在まで来てしまったんだ。
こうして、日本には、左派のアナーキズム(ナショナリズムの否定)と、
右派の革新ナショナリズム(戦前の政治体制に基づくナショナリズム)しか
残らなくなってしまった。
日本で「左翼」というと、「自己中心主義」「利権団体」「外国の代弁」というイメージがあるし、
「右翼」というと、「軍国主義」のイメージがあるけど、
それにはこういう経緯があるんだよね。
大多数の日本人は、「右翼」も「左翼」も嫌い。
いわゆる「政治思想」とは距離を置こうとしている人が大部分なんじゃないかな。
450 ◆6AjHmogJJlpe :2009/09/10(木) 09:13:09 ID:rxBnuWVN
これは日本人にとってものすごく不幸なことだと思う。
なんでって、普通だったら一番中心に置かれるべき
「保守ナショナリズム」が存在しないわけだから。

ネット右翼の人には、
全共闘の遺物みたいな「革新ナショナリズム」に
引きづられている人が多いように思うけれど、
もう一度冷静になって、自分が置かれた立場をきちんと考えるべきだと思う。