たとえば、日本に在住していない外国人が日本の国連大使やWTOへの日本代表団の団長や副団長となって日本の代表として発言や投票をしていたら、たとえ日本政府の承認のもとであっても奇異であり、誰をどう「代表」しているのか考えさせられるが、少なくとも
モラトリアム採択前後のIWCはそういう事が行われる場所だったのである。
日本が行っている調査捕鯨は、英語による報道ではResearch Whalingという言葉よりはScientific Whalingと呼ばれる場合の方が多い。 IWCの用語ではScientific Permit(科学許可)やSpecial Permit(特別許可)と呼ばれる範疇に属する。国際捕鯨取締条約(ICRW)
の第8条第1項により、加盟国政府には自国民に対し科学調査のために鯨を捕獲する許可を与える権利が与えられており、それに基づいた鯨の捕獲調査をいう。調査計画の名称は、南極海で行っているのがJARPA(Japanese whale Research Program under special permit
in the Antarctic)、北西太平洋で行っているのがJARPN(Japanese whale Research Program under special permit in the North Pacific)である。
このように、条約上の正当な権利ではあるが、日本の調査捕鯨の自粛を求めるような決議が毎年IWCで採択されているのは、例えて言えば、憲法で保証された権利を否定するような決議が議会で採択されるようなものである。
★ JARPA (1987/88−2004/05) ★
商業捕鯨の最後の時期、日本が南極海で捕っていたミンククジラについて、IWCの科学委員会は資源量が豊富である事を調査データによって認めていたが、IWC本会議においては未だ科学的知識には不確実性があるという事で、モラトリアムの採択となった。その背景には、
商業捕鯨では鯨が多い場所を探し捕獲するため、そこから得られたデータにはサンプリング上の片寄りがあるという意見もあった(商業捕鯨においても捕獲したすべての鯨からサンプルの採取は行われ、生物学的なデータは解析されていた)。モラトリアムの決定に際し
ては、「遅くとも1990年までに資源量の包括的評価を行って再度見直す」という条件がついていたため、南極海のミンククジラに関して、より信頼性の高いデータを得るために新たに調査方法をデザインして開始した、というのが南極海で調査捕鯨が開始された大ざっぱ
な経緯である。