官僚によるマインドコントロール()捕鯨問題-10’
/その点で、スイスの国連加盟拒否はまさしく『わが道をゆく』ものだった。 (…) 一つの興味深い考えかたとして尊重したい。」なかなか
面白い社説である。面白いと私が言う意味は、この主張自体にはほぼ賛成だが、朝日がこういう社説を載せたのは、当事者がスイス、すなわち外国、それもヨーロッパの国だからではないか、という疑いがあるからだ。仮に日本で、社説冒頭で言われているよう
に、「国連に残るべきか」という国民投票をしたとしよう。そしてもし「残るべきでない」という結果になったら、朝日は同じような社説を載せただろうか。私は、載せないだろうと思う。恐らくその場合は、「色々国連にも問題はあるが、内部改革に努めるべ
きだ。世界の孤児になるような真似は慎もう」というような社説になったのではなかろうか。すなわち、独自路線を一点の曇りもなく朝日から認めてもらえるのは、日本以外の国だけなのである。国際機関と言うのにもためらいがあるIWCが日本の調査捕鯨に
対して向けた非難を受けた先の社説と比較してみれば、それは明らかだろう。いずれにせよ、それから数年間、朝日新聞の論調には基本的な変化はなかったと言ってよい。反捕鯨国の横暴に対して日本を初めとする少数の捕鯨国が様々な手段で抵抗しながら功を
奏さないという事態が延々と続き、それが比較的詳細に、主として土井全二郎により報道されたのである。 それが変わってきたのは93年になってからだ。まず、1月23日に神谷敏郎の「クジラ類とどう付き合うか」という一文が掲載された。この年、IWC総会
が京都で開かれるにあたってジョン・C・リリーが来日したのを機として掲載されたものである。リリーは、前々回から本論に登場しているが、鯨類高知能説のマッド・サイエンティストだ。神谷は医学者で、92年に中公新書から『鯨の自然誌』を出している。
この本を読むと、彼の鯨イルカ問題へのスタンスがよく分かる。例えばイルカの知能に関する章では、リリーのように積極的に高知能を主張する説と慎重派とがあるとしながらも、こう述べている。
「なかにはイルカ語の解読に成功したという報告すらある」「近年の目覚ましい科学技術の進歩、特にニューロ・コンピューターの開発や応用による高度情報分析技術の進歩によって、近い将来に人間と動物の音声情報交換の実現の可可能性は高く、