官僚によるマインドコントロール()捕鯨問題-10’
(調査捕鯨は、当初の計画ではミンク825頭、マッコウ50頭とされた。しかしその後ミンク300 - 400頭で実施されている。)この社説を通して読むと、朝日の社説に特有な曖昧さが目立つ。基本的な主張は題のとおりなのだが、捕鯨から全面撤退せよと言ってい
るわけではない。「国際会議の体をなしていないと、捕鯨国の間で不満の強いIWCだが、今度の総会でも数にものを言わせる強引なやり方が目立ったらしい」「関係者の怒りは分かるが」と捕鯨国側に配慮した言い回しもある。また、鯨資源の調査は続行しな
ければならないとも述べている。総じてこの時の朝日はまだまともだったと言ってよい。調査捕鯨への懐疑は、(1)で述べた朝日の姿勢に近いが、IWCのあり方がおかしいということは明言しており、「IWCについても、国際会議にふさわしいものに改組
するなり、FAO〔国連食糧農業機関〕など他の適当な国際機関のもとでクジラ問題を扱うなり、抜本的な改革をはかるべきだろう」と提言している。また、社説以外では、反捕鯨国の偏見やIWCの奇妙さを指摘する署名記事がこの前後には多く掲載されてい
た。編集委員・土井全二郎のものが目立つが、それ以外にも「私の言い分」に捕鯨協会事務局長・高山武弘や捕鯨砲手・田中省吾が「私の言い分」に登場したり(86年6月1日、87年11月29日)、捕鯨船乗組員・松田清忠や弁護士・渡辺法華が「論壇」に寄稿した
りしている(87年3月24日、7月29日)。もっともこの頃でも違った論調の署名記事もある。編集委員・石弘之の記事だが、これについては後で取り上げる。ところで、同時期の朝日に面白い社説が載ったので、捕鯨問題とは直接関係はないが紹介しておこう。 8
6年3月21日掲載の「国連を疑うスイスのこころ」だ。これは、スイスが国連へ加盟すべきかどうかを国民投票にかけたところ、圧倒的多数で否決されたというニュースに関して出されたものである。「もし日本で『国連に残っていてよいか』という国民投票をし
たら(…)賛成が圧倒的多数になるのは、まずまちがいない。」「あらゆる組織と同じように、国際機構も硬直やたるみをまぬがれない。とくに巨額予算を抱える寄り合い所帯の国連には、その危険が大きく、加盟国の監視や批判はぜひ必要だ。/ところが、われ
われ日本人は国際機関にたいして敬意を持つあまり、批判を避けがちだった。 (…)われわれはもっと自主性を持ちたい。