558 :
N ◆5UMm.mhSro :
559 :
N ◆5UMm.mhSro :2008/12/11(木) 06:49:35 ID:YXcfzpSm
NMPそれ自身は完全に詳細規定された方式ではなかった。どのように捕獲枠
を計算するのか、ということも正確に規定されていたわけではなく、科学委員会
がアドホックにおおざっぱな経験則を開発して用いていたのである。
図7‐3はNMP実行の、科学委員会の方法でのシミュレイションの例を示して
いる。
<図7−3の説明 鯨個体群生息数、NMPルールによる捕獲のシミュレイション。>
|仮定として設定された鯨個体群に対する新管理方式(1975年に採択、名目上現在
|も有効)を適用した場合の100のコンピュータ・シミュレイション。
|図は100回の計算の中央値と、5番目に低い結果、5番目に高い結果を示している。
|個体数トレンドは平均的に見て満足できるものだが、ありうる結果の幅がとても
|広い。「アンラッキー」なケースでは、個体数が絶滅近くにまで運ばれる。
|新管理方式(NMP)はしたがって、理論的にも安全な管理方式ではない。
560 :
N ◆5UMm.mhSro :2008/12/11(木) 06:50:07 ID:YXcfzpSm
図で示されているのは、典型的で、高度に単純化したシナリオの
100の模型から出てくる帯域幅である。
100の模型を走らせる理由は、管理方式が不可避的に、ランダムで
予測されないような要因に左右されるからである。
同じシナリオの二つのシミュレイションが同じ結果を出すことは無い。
管理工程決定の基礎になるデータ(海での鯨の調査もこれに含まれる)は、ランダムな資料採取にともなう誤差を前提として含む、というのも
この大きな理由である。
図が示しているのは、100年間にわたる個体群サイズの軌跡である。
結果が示すのは、強く減耗したクジラ個体群には高いリスクがある
ということである。
561 :
N ◆5UMm.mhSro :2008/12/11(木) 06:51:29 ID:YXcfzpSm
この図に示されていないのはNMPでの捕獲枠である。
NMP捕獲枠だと、変動幅が広すぎ、現実の世界では管理方式が事実上
機能し得ないだろう。
強調しておかなければならないのは、これが高度に理想化されたシナ
リオであり、NMPの仮定がすべてそのとおりに実現している時のこと
だという点である。
もっと難しく、おそらく現実に近いようなシナリオでは、たとえば鯨
個体群が予期せざる行動をとり、管理方式のパフォーマンスは、より
悪くなるほうへのみ可能性をひらいているということになるだろう。
562 :
N ◆5UMm.mhSro :
NMPの不適切性が科学的に説明されたことから、IWC本委員会は
改訂管理方式(RMP)の開発に賛成し、これがNMPの欠陥を克服
すべきものとされた。(21)
得られた知見は同時に、1982年のモラトリアム決議を遡及的に
正当化するものであった。
かならずしもすべての鯨ストックが過剰捕獲されていたわけでは
なかったにもかかわらず、管理方式それ自身に欠陥があり、すべて
のストックを潜在的なリスクにさらしていた以上、全面的モラトリ
アムは合理的な管理手段だったと考えうるのである。
1990年に、モラトリアムが予定されていた再検討の時を迎え、
本委員会はこの論点を受け入れたが、かろうじてこれを受け入れた
というだけだった。
捕鯨諸国はモラトリアムが満了したと論じ、ゼロ以外の
捕獲枠を提案した。他方は改訂された方式が完成するまで
モラトリアムは継続すべきだと論じた。わずか2票の優位で、
後者が多数派となった。