官僚によるマインドコントロール()捕鯨問題-4

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101N ◆5UMm.mhSro
>>1にもどって
先日、アルゼンチンのモデル、ヴァネッサ・カルボーネさんが在チリ日本大使館前で
派手なパフォーマンスをやったので、日本大使館が捕鯨問題についてどういうことを
言っているのかと、HPを訪問した人々も多いと思います。

まとまったものとしては以下の二つがあります。まだ正確に対照してないけど多分同内容です。
(日本語)http://www.cl.emb-japan.go.jp/doc/hogeimondai.pdf 平成19年(2007年)12月17日、捕鯨問題への対応
(スペイン語)www.cl.emb-japan.go.jp/doc/2008%2003%20texto%20ballenas.pdf
表題は「捕鯨問題について/Sobre la Caza de Ballenas」

>まず日本の基本的な考え方について説明します。
>この問題についてはお互いの立場を冷静に理解することで建設的な対話が可能に
>なると考えています。

これはよいですね。いいことです。
102N ◆5UMm.mhSro :2008/12/06(土) 08:04:41 ID:yT4TxITG
次に、
>本件についてまず申し述べたいのは、国際捕鯨取締条約(CIRCB)は、その前文に
>あるように「鯨類の適当な保存を図って捕鯨産業の秩序ある発展を可能にする」ため
>に作られたものである点 http://www.cl.emb-japan.go.jp/doc/hogeimondai.pdf

これは日本国内でよく目にする言い方なのですが、対外的にはこういう一方的ないい方は
止めたほうがよいでしょうね。条約前文はそれまでの産業捕鯨が鯨類ストックを次々に崩壊
させていったことへの反省から始まっているのだということを謙虚に確認してからにした
ほうが良いでしょう。

チリの場合、かつてのピノチェト政権の頃には、サッチャーイズム、レーガノミクスに
一歩先駆けて、米国シカゴ学派のいわゆる「新自由主義経済」が実行された国という
ことで有名です。

したがって1990年代ぐらいまでは、とにかく産業界の要請を最優先するという
政官財テクノクラートが多かったのも事実です。そういう状態だと、捕鯨産業最優先
という考え方もすんなり受け入れられたかと思いますが、21世紀に入ってからはもう
違いますね。社会民主主義系&穏健キリスト教系の資源環境保護政策の考え方が主流に
なっています。

日本が「新自由主義」の考え方を正しいと思うんだ、ということを大使館として
主張するなら、それと南米諸国に現在ある「反米国共和党リベラリズム」の違いを
わかった上で説得にあたらなければならないと思います。私は大使館がそういう経済
イデオロギーを強く主張することには反対ですがね。
103N ◆5UMm.mhSro :2008/12/06(土) 08:07:17 ID:yT4TxITG
在チリ日本国大使館は、国際捕鯨取締条約について更に立ち入って述べています。

|すなわち、同条約は鯨類の致死的な利用を前提として締結されており、その主たる
|目的の一つは天然資源の一つである鯨類資源の持続可能な利用を図ることであって、
|これはまさに日本の捕鯨問題に関する立場の核を成すものです。チリも右考え方につ
|いては我々と価値観を共にしているはずです。

「鯨類の致死的な利用を前提(la premisa del uso letal de las ballenas)」というのは、
法律論レベルの高度な論争なら正確で適切な表現ですが、一般向けの対話で「致死的な利用
(del uso letal)」というのはちょっとおぞましすぎる表現ですね。

まあ国際法の議論をしているんだという意識ならそれはそれでよいとして、「チリも右考え方につ
いては我々と価値観を共にしているはずです」は明らかに言い過ぎでしょう。外交的な大失点です。

現在では「致死的な利用」以外の利用を重要目的として国際捕鯨委員会の議論に参加している
国々も多いわけですから。

実際、今年のIWCサンチアゴ大会の前にチリの議会はチリの排他的経済水域を、鯨類サンクチュアリ
とする決議をしたのだったですね。この文章を書いたのはその決議の前だから、と日本大使館が
言い訳しても、それは単に「情勢に疎い日本人」という姿をさらすだけでしょう。
104N ◆5UMm.mhSro :2008/12/06(土) 08:12:00 ID:yT4TxITG
http://www.cl.emb-japan.go.jp/doc/hogeimondai.pdf
|なお、チリは1994 年の南大洋鯨類サンクチュアリ
|設定の際、チリ200海里経済水域が同サンクチュアリ内に含まれないように、チリ
|周辺のみ南緯40度以南から南緯60度以南に境界線を変更させていますが、これは
|鯨類のみ過剰に保護することによって漁業に悪影響が出ることを心配した結果であ
|ると承知しています。

これはもう最悪です。
3重の意味で敵対的外交になってますね。

i)チリだけがサンクチュアリ海域の「南極の海洋生物資源の保存に関する委員会(CCAMLR)」保護海域
との一致を主張したわけではありません。

ii)まだピノチェト将軍の隠然たる影響力が残っていた時代のチリ代表の妥協的態度を、現在のチリ国民
の腹の中で再確認させ、責任の一貫性を要求するというようなものの言い方は外交官として不適切です。

iii)「鯨類のみ過剰に保護することによって漁業に悪影響が出る」という、いわゆる鯨食害論は、
1994年のIWC総会でグレナダが主張していますが、チリがそういう主張をしていたという記録は
少なくとも公式文書には無いです。もしそういう意向をチリ代表が示していたとするならば、明らかに
それとは異なる見解を持っている現政権に確認をとってから、こういう非公式発言は引用すべきでしょう。

私自身、実際この当時のチリ代表(P. Cabrera F. Danus)がどういう経緯でそういう主張をする
ようになったのか、非常に興味があります。
当時チリに進出していた日本の水産業界や、それを支援していた日本大使館&水産政策外郭機関の
動向ともかかわるし。