335 :
名無しさん@3周年:
憲法「押しつけ」論の幻(小西豊治著 講談社現代新書)という本があります
その本では、最初のアメリカ側の憲法改正案には国民主権を明確に言及されてなく
かなり保守的であったと言われてます。
「主権在民」も「象徴天皇」も占領軍の最初の構想では明確ではなく、特に天皇の
扱いには占領軍も苦慮していた。
そこに、在野の「憲法研究会」(鈴木安蔵他7名)が早くも1945年12月に「憲法草案要綱」
を首相官邸に提出し記者団に発表した。その中では、「主権在民」や「象徴天皇」が明確
に位置づけられており、この内容は占領軍も度肝を抜く内容であった。政治顧問アチソン
は、本国に緊急の書簡を送り、その衝撃を伝えているという。
これが、その後マッカーサーが、「国体護持」で煮え切らぬ政府に、「推しつけた」と
される、憲法の骨子となっている。
鈴木安蔵は明治・自由民権運動の論客・植木枝盛(土佐)を、家永三郎よりも早く研究
していた第一人者であり、「主権在民」も「象徴天皇」も植木枝盛が著した
「東洋大日本国憲按」や植木枝盛が原案を書いたと言われる土佐立志社の「国憲按」で
打ち出されていたものである。著者・小西豊治氏は、「主権在民」「象徴天皇」のルーツ
が植木枝盛の国憲按にあり、占領軍で憲法制定に深く関わった弁護士出身のラウエルや
ノーマンも、鈴木安蔵の論に影響されてか、あるいは独自の視点からか植木枝盛を研究
していたことを解き明かしてゆく。そして、「主権在民」も「象徴天皇」も、日本人民
の叡智であることを論証して行くのである。
336 :
名無しさん@3周年:2009/03/21(土) 19:29:13 ID:HHNkISBw
今の憲法はアメリカの押し付け、日本は与えられた民主主義と思われがちだが
マッカッサー草案は憲法研究会の案に影響をうけていて、その案は明治の
自由民権運動の頃の植木枝盛の憲法の案から影響を受けている、植木の案は
完全に民主主義の憲法であり、明確に国民主権と天皇は儀礼的な存在とあり
自由や人権についての保証してあったという。
自由民権運動時代に多くの私議憲法草案が出されたが、そのほとんどが
明治憲法よりデモクラティックなものだったという。
その後大日本帝国に日本はなっていき、一部の知識人やエリート以外は民主主義
思想に触れることがなくなり、さらに軍部が政治を動かすようになると自由主義
は弾圧の対象になっていくということだが、しかし日本にも民主主義の歴史があり
日本は自力で民主主義を勝ち取った訳ではないが、日本人の思想、価値観には
幕末以降から入ってきた民主主義の思想に影響受けた人たちがいて、それなり
の伝統があり、戦後占領されて初めて民主主義を教えられた訳ではない。
大日本帝国など日本の歴史の一部に過ぎず、そんなものは日本の守るべきもの
でもなんでもない、憲法研究会の話から考えれば日本国憲法の多くは日本人が
作ったといってもいいだろう。
337 :
名無しさん@3周年:2009/03/21(土) 19:30:19 ID:HHNkISBw
日本国憲法を押しつけた、とされているアメリカ側は実際には国民主権の
宣言を規定を設けるアイデアを持っていなかった。
アメリカが主権を見落としたのには、法制史上の理由があり、アメリカの
憲法には国民主権の宣言規定がなく、それに慣れ親しんでいたので、主として
フランス憲法思想の伝統となった国民主権の宣言規定の必要性、重要性に
思いいたらなかった。
アメリカは天皇の軍事的特権を奪い、政治的権限を縮小してもなお残る
天皇の精神的影響力、精神的権威の利用の可能性、危険性を思わず
ここに君主制の歴史をもたないアメリカ側の盲点があった。
「時の政府」は自己の保身、政策実現に「天皇の権威」を利用する可能性
があり、それを完璧に封じ込める道が「天皇の儀礼的存在=「天皇の政治への
無関与」なのだということに、アメリカは最初は気づいてなかったと言える。
アメリカ側にそのことを思い知らせたのが、憲法研究会草案であった。
宗教戦争の惨禍を経験したヨーロッパ社会は、近代国家を形成する際、宗教と
政治をどう分離すべきかを最も重要視してそれが、政教分離の原理を土台とした
政治思想を形成したのですが、アメリカは宗教戦争から逃れた人々がつくった
国家であり、封建制、王制から民主化する大変さを経験せず、政教分離の重要性
の意識が低い、そして今でもその傾向がある。
アメリカは憲法でもっとも重要ともいう主権の宣言規定と言う問題を見過ごし
ていて、それを気づかせたのは憲法研究会であり、植木枝盛の憲法案や
明治期のデモクラシーの思想と伝統である。
日本人は明治の自由民権運動の歴史を忘れてはいけない。
338 :
名無しさん@3周年:2009/03/21(土) 19:31:55 ID:HHNkISBw
憲法研究会案は明確に直接民主制志向を示していた。国民投票によって議会が
解散されることもあるし、国民投票によって議会の決議を無効にすることもできた。
ただそれはマッカーサー草案には採用されなかった。
憲法研究会会員たちは、代議政治を百パーセント信頼していなかった。
戦前、人権を抑圧する法=治安維持法を議会がつくりだし、議会は軍部の横暴を
止めることができなかった事実を目のあたりにしている。
鈴木安蔵は、戦前日本では行政権も司法権もはなはだしく国民から超越し
三権分立は空洞化し、専制的一元的統治となっていたから、議会の権限をいかに
拡大しても日本国家の民主化のためには不十分であると指摘。
議会自身が「真に民主主義の十全な具現者であることは簡単ではない」と述べ
マッカーサー草案に対して補正要求を突きつけている。
その言葉には現代政治になお有効な視点が示されている。
鈴木はマ草案は人身の自由等についての保障規定などは我々の草案より優れた
ものであるが社会的基本権の規定においては我々の草案の見地にははるか
及ばない、と述べ現在の日本国憲法25条がマッカーサー草案に欠けており
それは本来、憲法研究会が生み出したものであると指摘し、実際、研究会員の
森戸辰男が社会党代議士として政府案に25条を追加せよと主張し可決された
のである。
第25条【国民の生存権と国の責務】
1 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び
公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
339 :
名無しさん@3周年:2009/03/21(土) 19:34:02 ID:HHNkISBw
憲法研究会案の福祉国家志向と直接民主制志向は、現代なお有効な視点を
掲示し、二十一世紀の新しい憲法を考える重要な素材を示している。
研究会案は、終戦の年にいち早くつくられ、極東委員会の成立をひかえ
一週間での作成を強いられたマッカーサー草案の成立を助けた。
そして今日もなお、新しい時代の憲法を考える豊かな視点を示して
国民主権の原則を日常的に具体的に実現するにはどうすればよいのか、現代
の憲法構想を助けている。
もちろん国民投票による議会の解散など直接民主制はその基盤に国民の高い
政治意識と責任感がなければいけない。
直接民主制の拡大は国民の政治的自覚と民主主義の意識の成熟が重要である。
現状では今の憲法のもと政治家も含め民主主義国家として日本が成熟するまで
は難しいと思える、そしてその間はより良い改憲でも憲法改正は時期尚早だろう。
340 :
名無しさん@3周年:2009/03/21(土) 19:36:05 ID:HHNkISBw