【斎藤貴男「二極化・格差社会の真相」】
東大阪の生き埋め、エリート高校生の放火と村上ファンド事件
東大阪市の大学生ら2人が岡山市の資材置き場で生き埋めにされた事件について、
ある雑誌からコメント依頼のファクスが届いた。
事件記者でもないライターに白羽の矢が立ったのは、いわゆる格差社会との関連を問いたかったらしい。…
一般論として、貧困や差別が事件の温床になりやすい程度のことは言える。
秋田県藤里町の児童殺害事件や、岐阜県中津川市の空き店舗で中2の女子が殺された事件でも、
背景に社会的な階層格差が横たわっていなかったとは考えにくいのも確かである。
将来への希望が乏しすぎるのだ。あまりに刹那的な社会である。
医師志望のエリート高校生が自宅に放火した奈良の事件もあった。
すべての犯罪を階層論で説明できるわけではないし、人間の愛憎はそんなものをはるかに超越しているのだろうが、
とはいえ、不特定多数を狙った犯罪のかなりの部分は、世の中のありよう次第で、防げるのではないか。
私自身、仮に職を失って自暴自棄になり、飢え死にでもしかければ、
ひったくりやかっぱらいの誘惑に負けない自信はない。ブタ箱に入ればメシが出ると考えるかもしれない。
折しも世論は福井俊彦・日本銀行総裁が村上ファンドに投資していた問題で沸騰している。
法に触れようが触れまいが、彼のような立場の者がやってはいけないと思うが、
これもまた詳しい事情を知らない以上、安易な非難は避けておこう。
重要なのは、事件に宮内義彦・オリックス会長が関わっているという重大な事実だ。…
竹中平蔵総務相らとともに、今日の格差社会を導く構造改革路線を徹底させてきた人物だ。
国民皆保険制度を崩してまでもアメリカ資本に莫大な医療保険市場を提供しようとし、
ついでに自社のビジネスにしてしまう。立場を利用したマッチポンプを繰り返してきた政商ではないか。
彼と村上ファンド、福井総裁の関係は、あからさまな現実を思い知らせてくれた。
構造改革とはとどのつまり、彼ら一握りのインサイダーが国富を独占するための私物化政策でしかないのである。
そのことと救いのない事件の頻発とは、表裏一体の関係にあるのではないか。
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