■■ テレビ局はなんで竹中批判をしないのか ■■

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===狙いは弱い企業潰し?===

「小泉内閣の不良債権処理加速策。この政策では景気はますます悪化」

神戸大学院経済学研究科教授  山家悠紀夫

全国商工新聞11/18


「これが銀行のやることか、福岡銀行が強行な貸しはがし」「横浜銀行、債権回収で企業つぶし」
このところの全国商工新聞の紙面からは、全国いたるところで苦悩している中小企業の悲鳴が伝わってくる。
多くの金融機関が強引ともいえる「不良債権処理」をおこなっているからである。もちろんその背後には、処理を強行させている小泉内閣の「構造改革」政策がある。

「処理促進策の下でかえって増えた不良債権」

そうした状況下、小泉内閣は「不良債権処理を加速」させるという。10月30日の政府・与党会議の決定である。
その内容を見ると、当初伝えられた竹中案(税効果会計など会社制度を変更し、銀行の自己資本を減少させて公的資金を強制注入し、
不良債権処理を加速させようとするプラン)よりは後退したものの、資産査定を厳格化して不良債権と見なすものを増やすこと、04年度の不良債権比率を現状の半分程度に低下させること、
などが盛り込まれており、一段と厳しい「不良債権処理」を金融機関に迫る内容となっている。一対、その先に何が起こるのか。
「不良債権処理の促進」が政策として掲げられた過去1年半の間に何が起こったのか。それは既に明らかである。
年間2万社に近い企業倒産の発生(01年度の倒産件数は戦後3番目の多さ。02年度も前半を終わったところでは倒産件数は前年並み)であり、
30万人前後の失業者の増加(01年度の失業者は戦後最多、失業率は戦後最悪。02年度もほぼゼロ成長の見込み)である。
それでは、そうした悲惨な数々の数字を生み出しつつも不良債権問題は解決に一歩近づいたか。逆である。不良債権残高はかえって膨らみ、問題解決はかえって遠のいた。
具体的な数字で見てみよう。この政策がスタートした時点で2年以内に処理すべしとされた主要行の対象不良債権の残高は12,7兆円であった。それが今や15,4兆円となっている。
1年半で2,7兆円の増加である。
なぜか。銀行が処理しなかったからか。そうではない。銀行はこの間に当初処理対象とされた不良債権のうち8兆円を処理している。
にもかかわらず残高が増えたのは一方で不良債権の新規発生が大量にあったからである(新規発生13,2兆円。うち2,5兆円は早くも処理済み。)

「小泉内閣は不良債権!?それとも?」

不良債権の処理を急ぐと企業倒産が増え、失業者が増え、景気は悪くなる。そうすると新規に不良債権が発生するから不良債権問題は解決しない。そんなことは最初から自明のことであった。
愚かな政策当局には自明ではなかったかもしれないが、今は結果がそのことをきちんと示してくれている。
この政策では景気はますます悪くなる。不良債権問題もより解決しづらくなる、にもかかわらず「不良債権処理を加速」させるとは?
小泉内閣(そして竹中担当相)はまったくもって愚かでどうしようもない「不良債権!?」であるのか。
それとも「不良債権処理の加速」政策とは、そもそも景気回復を図るための政策ではない、不良債権問題を解決するための政策でもない、ということなのか。
どうもそのようなのである。「不良債権処理」の政策とは、不良債権を処理すること、そのこと自体が目的の政策ではないか。
長引く景気低迷の下で、「不良債権」と見なされるようになってしまった企業(弱い企業、大半は中小企業)を、この際徹底的につぶしてしまうこと、
あわよくば、さらに不況を深刻化させて、もっと多数の企業をつぶすこと、そうすることによってこの日本から弱い企業をなくしてしまい、生き残った強い企業だけの日本経済にしていくこと、それが本当のねらいではないか、と思えてくるのである。

新しい「処理加速」政策の下で、銀行は一層「不良債権処理」に必死となるだろう。処理できない銀行は弱い銀行として、銀行自体が処理の対象とされるからである。
中小企業の苦悩は続かざるをえない。この政策が、そして多分この政権が、続く限り・・・。