また巻き添え規制????規制40ヶ月目

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689名無しの報告
  火薬と紙幣


萱の穂は赤くならび
雲はカシユガル産の苹果の果肉よりもつめたい
鳥は一ぺんに飛びあがつて
ラツグの音譜をばら撒きだ
   古枕木を灼いてこさへた
   黒い保線小屋の秋の中では
   四面体聚形(しゆうけい)の一人の工夫が
   米国風のブリキの缶で
   たしかメリケン粉を捏(こ)ねてゐる
鳥はまた一つまみ 空からばら撒かれ
一ぺんつめたい雲の下で展開し
こんどは巧に引力の法則をつかつて
遠いギリヤークの電線にあつまる
   赤い碍子のうへにゐる
   そのきのどくなすゞめども
   口笛を吹きまた新らしい濃い空気を吸へば
   たれでもみんなきのどくになる
森はどれも群青に泣いてゐるし
松林なら地被もところどころ剥げて
酸性土壌ももう十月になつたのだ
   私の着物もすつかり thread-bare
   その陰影のなかから
   逞ましい向ふの土方がくしやみをする
氷河が海にはひるやうに
白い雲のたくさんの流れは
枯れた野原に注いでゐる
  だからわたくしのふだん決して見ない
  小さな三角の前山なども
  はつきり白く浮いてでる
栗の梢のモザイツクと
鉄葉細工(ぶりきざいく)のやなぎの葉
水のそばでは堅い黄いろなまるめろが
枝も裂けるまで実つてゐる
   (こんどばら撒いてしまつたら……
    ふん ちやうど四十雀のやうに)
雲が縮れてぎらぎら光るとき
大きな帽子をかぶつて
野原をおほびらにあるけたら
おれはそのほかにもうなんにもいらない
火薬も燐も大きな紙幣もほしくない