【生物】35億年前の超好熱性メタン菌が、窒素固定を行っていたことを確認 [2014/07/10]

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1おんさ ★@転載は禁止
35億年前の超好熱性メタン菌が、窒素固定を行っていたことを確認 2014年7月10日
http://www.natureasia.com/ja-jp/jobs/tokushu/detail/327

(本文)
西澤 学
海洋研究開発機構 海洋地球生命史研究分野 研究員

約40億年前に誕生したとされる生物は、深海の熱水噴出孔に生息する原核生物(古細菌と真正細菌)で、孔から
噴出する水素や二酸化炭素などを使って有機物を作り出していたと考えられている。海洋研究開発機構 海洋地
球生命史研究分野の西澤 学 研究員らは、メタン生成古細菌が炭酸固定だけでなく、窒素固定も行っていた可能
性が高いことを突き止めた。

http://www.natureasia.com/ja-jp/image/239/fig.jpg
今回の解析に用いた超高熱性メタン菌(上)と、生命進化の系統樹(下)。

生物の体は、タンパク質やDNAなどの窒素化合物から構成されている。そのため、環境中にある窒素化合物の同
化は生物にとって極めて重要だが、一部の例外を除き、生物は大気主成分である窒素分子を直接取り込むことが
できない。ヒトを含む多くの生物は、窒素固定能を持つ原核生物(藍藻や根粒菌など)が窒素分子から作り出す
アンモニアと、それに由来する窒素化合物を利用しているのである。

このことは、窒素分子からアンモニアを合成する原核生物が40億年前にはすでに存在していたことを示唆するが、
深海の熱水孔において、どのような種の原核生物が窒素固定していたのかはよく分かっていなかった。「窒素固
定を担うニトロゲナーゼ酵素を進化系統学的に検討することで、原始的な超好熱性メタン菌が窒素固定も行って
いたのではないかとの仮説がありましたが、証明するには至っていませんでした」と西澤研究員は話す。

今回、西澤研究員らは、この仮説を検証するために「中央インド洋海嶺かいれい熱水フィールド」に赴いた。
「水深2450メートルにあるこのフィールドは、地球初期の熱水生態系の特徴を色濃く残しています。私たちは、
高温熱水噴出孔の中に培養器を吊り下げ、数日間放置した後に回収し、合わせて噴出孔(チムニー)の一部も採
取しました」と話す。培養器からは「85℃でよく増殖する超好熱性メタン菌」が分離され、チムニー外縁部から
は「55℃でよく増殖する好熱性メタン菌」が分離されたという。

得られた2株を対象に、まず、リボソームRNA遺伝子の系統解析を行ったところ、どちらの株も、世界各地の深海
熱水環境で得られる代表的なメタン菌の系統に属することが分かった。その上で、これらのメタン菌が窒素分子
や他の窒素化合物を同化できるかどうかを調べた。「仮説どおり、2株とも窒素分子を同化できることが分かり
ました。これらの株は、その他にアンモニアも同化できましたが、硝酸は同化できませんでした」と西澤研究員。

次に、窒素固定のための酵素について調べたところ、好熱性メタン菌は「活性部位にモリブデンを含むニトロゲ
ナーゼ」を持つことが初めて分かった。「さらに私たちは、超好熱性メタン菌が、モリブデンと鉄の幅広い条件
下において、窒素固定可能なことも突き止めました。原始海水はモリブデンに乏しく、鉄に富んでいたと考えら
れているので、初期の熱水環境においては超好熱性メタン菌が窒素固定していたと推測されます」と西澤研究員。

さらに、「2株とも窒素固定速度は熱水の化学組成によらず一定で、その固定能は海洋光合成細菌(藍藻)より
も約10倍も高いこと」、「窒素固定能を持つ超好熱性メタン菌が35億年前に存在した場合に予測される(細胞の)
窒素同位体比が、当時の深海熱水性岩脈に保存されたメタン菌由来有機物の窒素同位体比と一致すること」など
も確かめたという。

一連の結果は、35億年前の深海熱水環境にいた超好熱性メタン菌が窒素固定を行い、最初期のアンモニア供給源
になっていたことを強く示している。この後、同様の窒素固定システムが光合成細菌にも備わり、海洋の表層部
でも窒素化合物が供給されるようになるが、光合成細菌が窒素固定能力を獲得したプロセスはよく分かっていな
い。「深海と海洋表層は物理的に隔離されているので、窒素固定に関わる遺伝子が伝播したとは考えにくい。遺
伝子伝播は地球初期の熱水環境においてメタン菌と光合成細菌の祖先の間で生じ、その後に海洋表層へ進出した
光合成細菌には誕生当初から窒素固定能が備わっていたのではないか」。そう考える西澤研究員は、始源的な光
合成細菌の窒素固定能についても検証し、光合成生態系の誕生と拡大の原理を探ることで、生命が繁栄した要因
に迫りたいと意気込んでいる。

西村尚子
サイエンスライター
2おんさ ★@転載は禁止:2014/07/10(木) 02:00:35.60 ID:??? BE:302861487-2BP(1000)
>>1
関連スレ
【生物】窒素固定の起源は35億年前の深海か [14/05/18]
http://anago.2ch.net/test/read.cgi/scienceplus/1400341524/
3名無しのひみつ@転載は禁止:2014/07/10(木) 02:08:23.18 ID:LG2wL5ry
参考
Manabu Nishizawa, Junichi Miyazaki, Akiko Makabe, Keisuke Koba, Ken Takai
Physiological and isotopic characteristics of nitrogen fixation by hyperthermophilic methanogens:
Key insights into nitrogen anabolism of the microbial communities in Archean hydrothermal systems.
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0016703714002634
4名無しのひみつ@転載は禁止:2014/07/10(木) 04:00:19.21 ID:05IsN4/2
よくわからんが、宇宙人の存在する可能性が飛躍的に高まったということだな。
5名無しのひみつ@転載は禁止:2014/07/10(木) 07:07:26.47 ID:00NyQLEk
【植物】シアノバクテリアの窒素固定に必須の制御タンパク質を世界で初めて発見[14/04/22]
http://anago.2ch.net/test/read.cgi/scienceplus/1398127516/

【惑星科学】タイタンの大気中の窒素はどこから来たのか
http://anago.2ch.net/test/read.cgi/scienceplus/1404057584/
【テラフォーミング】 地球上でもっとも単純な最古の生物であるメタン菌、火星上でも棲息できる可能性有り [AstroArts]
http://anago.2ch.net/test/read.cgi/scienceplus/1400834104/

【化学】窒素と水からアンモニア−脱化石燃料の合成に道 東京農工大
http://anago.2ch.net/test/read.cgi/scienceplus/1350481087/
【化学】窒素と水からアンモニアを製造する手法 省エネルギーを実現した新たな触媒が開発される/東工大
http://anago.2ch.net/test/read.cgi/scienceplus/1350937307/
6名無しのひみつ@転載は禁止:2014/07/10(木) 11:25:09.44 ID:n2B/blad
>>2ほとんど同じ記事じゃん
続報なのかな
7名無しのひみつ@転載は禁止:2014/07/10(木) 11:35:47.68 ID:YYXNe33M
別ソースによる同一記事だろう
何故かこっちが2ヶ月ちかく遅いが
8名無しのひみつ@転載は禁止:2014/07/10(木) 13:39:09.28 ID:u18dQfTc
熱水環境中の底泥で、有機物が35億年も乱されずに保存されるというのが驚き
そしてその有機物がメタン菌由来であることを確かめる技術にも驚き
さすがは理科大物理出身者だ。生物学者では到達できないほどの大胆さ
9名無しのひみつ@転載は禁止:2014/07/10(木) 14:03:04.26 ID:FJztJFuQ
メタン菌ですら窒素を固定しているというのにおまえらときたら
10名無しのひみつ@転載は禁止
http://photosyn.jp/journal/sections/kaiho51-5.pdf
↑この辺のテーマに興味があったんだろうね

普通は分子系統樹を作って、分岐した年代を推定するけど、
この研究は底泥の年代測定で推定したんだね。いかにも地学屋が喜びそうなアプローチ。
JAMSTECも、潜ったら潜ったで何か成果を出さないといけないんだろうし。