2014年5月16日
独立行政法人理化学研究所
学校法人東京理科大学
白血球「好塩基球」の喘息における新メカニズムを解明
−好塩基球と自然リンパ球(NH細胞)との共同作業で喘息が起きる−
私たちの体には、異物から身を守る免疫システムが備わっています。
しかし、このシステムも特定の抗原に対して過剰応答すると、アレルギーなどの反応が起きます。
T型アレルギーは免疫グロブリンE(IgE)抗体が、肥満細胞(マスト細胞)や好塩基球が持つ受容体に結合して起きます。
ところが、近年、マスト細胞などだけでなく、好塩基球や自然リンパ球(自然免疫を制御するリンパ球)による免疫反応が明らかになり、注目されています。
ダニ抗原やパパインなどに含まれるタンパク質分解酵素の「システインプロテアーゼ」は、アレルギーを強く誘導するアレルゲンです。
気道上皮から放出される情報伝達分子のインターロイキン「IL-33」を介して、自然リンパ球の1つNH細胞を活性化して喘息(ぜんそく)を引き起こします。
ただ、喘息の発症に関わる好塩基球の働きなど、詳細なメカニズムは分かっていません。
そこで、理研の研究者を中心とした共同研究グループは、マウスを用いて、このメカニズム解明に取り組みました。
共同研究グループは、マウス生体内で起きるアレルギー反応での好塩基球の役割を解析するため、好塩基球を欠損させたマウスと、好塩基球由来のインターロイキン「IL-4」だけを欠くマウスを準備しました。
通常、システインプロテアーゼを投与すると、肺に炎症の原因となる白血球一種の好酸球が大量に集まり、ムチンという粘液の産生が誘導されて喘息症状が現れます。
ところが、好塩基球を欠損させたマウスにシステインプロテアーゼを投与しても喘息症状は現れず、肺への好酸球の集積やムチンの産生も抑制されました。
喘息症状の抑制はIL-4だけを欠くマウスでも確認され、この結果、好塩基球から産生されるIL-4の重要性が示されました。
喘息発症時の肺への好酸球の集積は、肺に存在するNH細胞から産生される炎症に関わるケモカイン「CCL11」によるものであり、またムチンの産生もNH細胞から生み出されるインターロイキン「IL-5」、「IL-13」などによるものです。
そこで、好酸球の集積やムチンの産生過程でのIL-4の役割を調べたところ、好塩基球からIL-4が産生されないと、NH細胞からケモカインCCL11やIL-5、IL-13の産生が抑制されるとともに、炎症に関わるさまざまな遺伝子の発現が抑制されることが分かりました。
また、好塩基球を欠損させたマウスに野生型マウス由来の好塩基球を移入したところ、喘息症状の抑制が解かれて症状が現れ、同マウスにIL-4を産生できない好塩基球を移入した場合には喘息症状は現れませんでした。
これらの結果から、NH細胞の活性化には好塩基球から産生されるIL-4が必要であり、システインプロテアーゼで誘導される喘息では、好塩基球とNH細胞の共同作業が必要であることが明らかになりました。
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▽記事引用元 理化学研究所 60秒でわかるプレスリリース 2014年5月16日配信記事
http://www.riken.jp/pr/press/2014/20140516_1/digest/ 報道発表資料
http://www.riken.jp/pr/press/2014/20140516_1/