人の遺伝子が特許の対象になるかが争点となった訴訟で、米最高裁は13日、特許の対象にならないとの判決を全員一致で言い渡した。
遺伝子に特許を与えた場合、科学的な研究や医療行為を妨げると主張した医師や患者のグループが勝訴したことになる。
この裁判は、米ミリアド・ジェネティクス社が保有するBRCA1とBRCA2として知られる2つの遺伝子の特許をめぐり、がん患者や医師
遺伝学者が2009年に、同社を相手取って起こした。両遺伝子を持っている女性は、乳がんや卵巣がんを発症するリスクが高い。
同社は特許に基づきがんの発症しやすさを調べる遺伝子検査の市場を支配してきた。女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが最近
がんに関連した遺伝子変異が見つかったため両乳房の切除手術を受けたことを明らかにして、こうした遺伝子検査が注目を浴びた。
判決文には、トーマス判事は、「ミリアド社が重要で有用な遺伝子を見つけたのは確かだが、遺伝子の分離は発明行為ではなく
同社は何も創造していない」として、ミリアド社が人体から抽出して保有している遺伝子は自然の産物であり、特許とは認められない
とする意見を付した。
しかし判決はミリアド社の完全敗北だったわけではない。最高裁は、DNA分子や人工的に合成された遺伝子については特許で保護されるとした。
オバマ政権は、自然に形成された遺伝子の抽出は特許対象とはならないが、人工的に合成された遺伝子はそうなるとの立場を取っており
最高裁はこれを受け入れた形だ。これに対しミリアド社は、判決では乳がんを発症する遺伝子の検査に関する24の特許が維持される
ことになると指摘した。
原告を代表した米国自由人権協会(ACLU)のサンドラ・パーク氏は、「最高裁は患者の治療と医学の進歩を阻んできた大きな障壁を打ち破った」と
評価し、「患者は遺伝子の検査がしやすくなり、科学者は訴えられる恐れなしに研究に従事できるようになる」と述べた。
原告側は、ミリアド社が特許を所有しているため、同社が乳がんや卵巣がんの遺伝子検査のタイプや種類を決めるとともに、他の研究所の
研究を阻害していると主張した。これに対しミリアド社は、同社が大量の資金を投じて女性の遺伝性乳がんのリスク診断の突破口を開いたと
強調し、同社の特許を認めなければ、医学の進歩に対する投資を妨げることになると警告していた。
ソース:WSJ
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323504304578544231626748640.html