【遺伝】イヌとヒトは共に進化した 食習慣と行動に関する遺伝子を共有

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イヌとヒトは共に進化した

 ヒトとイヌの間には、古代より連綿と続く繋がりがある。夜はピタリと寄り添い、日中に歩けばはしゃぎ回り、寝床に
付けば足下にうずくまって親愛のまなざしで見つめてくる。そんなイヌだが、これまで考えられていた以上にヒトと深い
繋がりがあると最新の研究で明らかになった。それはわれわれの遺伝子に刻まれている。

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新たな研究によって、ヒトとイヌの繋がりがより深いものだと判明した。Photograph by Adrian Moss/Your Shot

 シカゴ大学を初めとする国際研究機関から集まった研究者らは、ヒトとイヌの遺伝子を調べ、複数の遺伝子
グループが何千年にもわたり並行して進化していたことを発見した。これら遺伝子は、食事や消化、そして神経
学上の作用や疾病などに関連するものだ。

 研究によれば、ヒトとイヌの並行進化は環境の共有によって起きた可能性が高いという。論文は5月14日発行の
Nature Communications誌に発表された。

「家畜化は人口密度の急激な増加と住環境の過密化に結びつけられることが多い。こうした不利な環境が選択
圧力として働き、両者の遺伝子変化に繋がったのかもしれない」と論文には記されている。

 たとえば過密な状況でイヌがヒトと暮らすことで、比較的おとなしい方が優位に働き、イヌ科の動物はより従順
性が増し、最終的に無条件の愛情を込めた無垢のまなざしを向けるペットになったのかもしれない。

 研究者らは論文の中で、イヌが家畜化したのは3万2000年前だろうとしている。これは1万5000年から1万6000
年前とする現時点での推定よりもかなり古い。

「3万2000年前というのは少々古い」と話すのは、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の進化生物学者ボブ・
ウェイン氏だ。とはいえ同氏も、オオカミとイヌが明確に分化したのは6000年から12万年前の範囲だろうと認めている。

 また今回の論文では、イヌの家畜化が始まった地域について、中東という従来の推定と異なり東南アジアとする
推論を示した。

◆イヌ科動物のミッシングリンク

 研究者らは遺伝子解析にあたり、ロシアと中国のハイイロオオカミ4頭、中国の野犬3頭、そして家畜化された
育成種3頭(ジャーマン・シェパード、ベルジアン・マリノア、チベタン・マスティフ)を調べた。

 解析によって、家畜化に関係する遺伝子はどれか、どのくらい前に家畜化が起きたのかが明らかになる。また
同時に、家畜化の期間に発生したイヌの遺伝子を調べ、ヒトの遺伝子と比較した。

「イヌの家畜化は2段階で説明されることが多い。第1段階はオオカミからイヌへの変化で、第2段階はイヌから
育成種(繁殖犬)への変化だ」と語るのは、論文の共同執筆者で中国科学院の遺伝子研究者ウェイウェイ・
ジャイ(Weiwei Zhai)氏だ。

 今回の研究で調べた中国の野犬を含む東南アジアの野犬は、世界の他地域の野犬と比べて遺伝子の違いが
大きく、進化上は純血種のイヌとオオカミの中間の存在かもしれないとジャイ氏は説明する。つまり中国の野犬が
イヌ科動物におけるある種の「ミッシングリンク」になるということだ。

◆共に進化する

 ジャイ氏らがイヌの遺伝子とヒトの遺伝子を比較したところ、セロトニンなど神経伝達物質の運搬やコレステ
ロール生成、そして癌にまつわる部分が選択的に現われていることを発見した。

 異なる種の遺伝子に同じ部分が存在する現象は、自然界ではめったに発生しない収斂進化として知られるが、
ジャイ氏によれば今回の結果はそれほど驚くことではないという。結局のところ、ヒトとイヌは同じ住環境を長年に
わたって共有してきたからだ。

>>2あたりに続く

Jane J. Lee/National Geographic News May 15, 2013
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20130515002