産業技術総合研究所(産総研)は、昭和電工と共同で、過酸化水素を利用した
酸化技術によって、半導体などの封止材用途に向く、塩素を利用しないエポキシ
樹脂原料の効率的な合成法を開発した。過酸化水素は酸化反応後の副生成物
が水のみという特徴を持ち、クリーンな酸化剤として知られる。過酸化水素の反応
性は低いものの、今回、最適な触媒を開発したことで、エポキシ樹脂原料を高効
率、高純度で製造できるようになったとする。
今回発表した、塩素を利用せずに封止材を製造する技術は、最近になって半導
体分野などで進んでいる基板配線の金めっきワイヤから銅ワイヤへの変換に対応
した新しい技術である。従来のエポキシ樹脂は、製造時に混入する塩素系化合物
が銅ワイヤを腐食してしまうため、封止材の長期信頼性を低下させる。これに対し
て、今回のエポキシ樹脂は塩素系化合物による腐食の心配がなく、高い長期信頼
性が期待できる。昭和電工は2014年以降の実用化を目指し、この新たなエポキシ
樹脂の製造プロセスの確立を進めている。
今回、半導体封止材などに向けたエポキシ樹脂として、グリシジルエーテル系化
合物の製造方法を開発した。グリシジルエーテルは、加工性のみならず、耐候性、
耐熱性、絶縁特性に優れ、封止材に最適なエポキシ樹脂とされる。その半面、この
化合物は脂環式エポキシ化合物に比べ、エポキシ化が格段に難しく、触媒の精密
な調整が必要になるという課題があった。今回開発した技術では、原料からアリル
エーテルを合成し、過酸化水素による酸化反応によってエポキシ化し、グリシジル
エーテルを製造する。この合成工程により、塩素系化合物をはじめとするハロゲン
を使わずにグリシジルエーテルを製造できるようにした。触媒にはタングステン錯体
−リン系添加剤の組み合わせを基本に、アミン系添加剤を組み合わせた。この触
媒により、副生成物が水だけの環境低負荷なグリシジルエーテルの製造法を実現
した。
さらに、反応のスケールアップ、コストの低減、触媒量の低減を行うことで製造プロ
セスを現実的なものとし、工業的な製造規模においてもその実証を済ませたとする。
現在、サンプルの評価をユーザー企業と共同で行っている。硬化後のエポキシ樹脂
から塩素イオンがほとんど抽出されない上、成型性に問題はなく、絶縁信頼性が向上
したという。
ソース:日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1902T_Z10C12A9000000/ 依頼スレ31@
http://anago.2ch.net/test/read.cgi/scienceplus/1345176435/262