赤ちゃんマウスで神経幹細胞が復活
2012年7月19日
胎児期にしか作られないとされていた脳内の神経細胞を、出生後のマウスで作り出すことに、東京大学
分子細胞生物学研究所の後藤由季子教授や岸雄介助教らのグループが成功した。
哺乳類の大脳皮質を形成する神経細胞は、胎児期に「神経幹細胞」によって作られる。出生以降は神経
幹細胞の能力が失われてしまうので、事故や病気で脳が損傷すると神経細胞は元には戻らないとされて
いた。
研究グループは、マウスの神経幹細胞で胎児期に活発に働き、出生後には活動が低下する「HMGA」と
呼ばれる遺伝子群に着目した。生後数日の赤ちゃんマウスの脳で遺伝子を操作しHMGAを働かせると、
再び神経幹細胞の能力が復活したという。
後藤教授らによると、生体内で神経幹細胞の復活(若返り)を発見したのは世界で初めて。神経細胞の喪失
や、機能不全を原因とした神経疾患の治療につながる可能性もある。論文は米国科学誌「ネイチャー・
ニューロサイエンス」(オンライン版、15日号)に発表された。
なお、今回の研究成果は、科学技術振興機構(JST)の 戦略的創造研究推進事業、チーム型研究(CREST)
「脳神経回路の形成・動作原理の解明と制御技術の創出」研究領域における研究課題「神経幹細胞の分化
ポテンシャル制御による神経回路構成素子の形成メカニズム」、および新学術領域研究「神経細胞の
多様性と大脳新皮質の構築」研究領域における研究課題「胎生期大脳新皮質神経幹細胞による多様な細胞の
産生機構の解析」によって得られた。
▽サイエンスポータル
http://scienceportal.jp/news/daily/1207/1207191.html ▽東京大学プレスリリース
「神経幹細胞の若返り因子を発見」
http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_240716_02_j.html ▽Nature Neuroscience発表論文
HMGA regulates the global chromatin state and neurogenic potential in neocortical precursor cells
http://www.nature.com/neuro/journal/vaop/ncurrent/full/nn.3165.html