核酸医薬、製造容易に 東京医大など
東京医科大学の黒田雅彦教授と創薬ベンチャーのボナック(福岡県久留米市)は、副作用が少なく
高い治療効果が期待できる「核酸医薬品」の新しい製造法を開発した。病気の原因となる遺伝子の
働きを抑えるRNA(リボ核酸)を従来の数十分の1のコストで作れる。九州大学や大阪大学、国立がん
研究センターなどと協力し、目の難病やがんの治療に向けた臨床試験(治験)を2〜3年以内に始める。
核酸医薬品は病気に関連する遺伝子…
日本経済新聞 電子版 2012/4/16 1:04
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C889DE6E2E6E1E5E2E5E2E3E7E2E6E0E2E3E086989FE2E2E2;at=ALL ◆ボナック核酸
ボナック核酸は、(株)ボナックにより独自に開発された、次世代型の核酸干渉作用を有する基盤技術
です。従来のsiRNA(二本鎖短鎖RNA)とは異なる、ユニークな分子内構造(2次構造)を有する一本鎖
長鎖核酸を構造的な特徴とします。既に日本国内にて特許査定が認証されているため、特定の欧米
企業が専有する既存の核酸干渉に関する基盤技術(特許)に依存することなく、独自の核酸医薬を
開発することが可能となります。
<生体内の安定性>
従来のsiRNAが抱える課題であった生体内での安定性が改善されています。RNAを切断する酵素には
様々な種類がありますが、通常、体内に入ったRNAは迅速に分解されてしまいます。したがって、多くの
医薬品候補として用いられているsiRNAは、生体内での安定性を向上すべく、加水分解の起点となる
部分を化学修飾することで保護しております。しかし、それによる薬理作用の低下、人工的異物としての
安全性への問題、さらに製造コストの増大など、新たな課題を生じます。ボナック核酸は、RNA核酸の3’
末端部分が分子内結合により折り返されている、ユニークな分子内構造を有しています。今後より詳細な
検討を進めて行く必要はありますが、ボナック核酸は、こうした特徴的な分子内構造により、核酸分解
酵素が作用しづらく、生物学的安定性(核酸酵素耐性)の向上に関与しているものと考えております。
<副作用の回避>
siRNA(短鎖二本鎖RNA)を用いた遺伝子の発現抑制には、Toll様受容体(動物の細胞表面にある
受容体タンパク質で、種々の病原体を感知して自然免疫を作動させる機能を有する)の活性化による
副作用の問題が明らかとなっています。特にToll様受容体3(TLR3)は、ウイルスの二重鎖RNAを認識
することにより活性化され、ウイルスへの防御機能として、インターフェロン(INF)等のサイトカインなどを
生成します。
siRNAは、このTLR3を活性化し、サイトカインを誘導しますが、この誘導は、siRNAの塩基配列には関係
なく、二本鎖という構造に依存することが明らかとなっています。実際、これが理由で米国においてsiRNAに
よる第III相臨床試験が中断したとの評価があるほどです。ボナック核酸は、折り返し構造を有しますがそも
そも一本鎖であることから、こうした二本鎖RNAによるTLR3活性を回避し、非特異的炎症誘導が低減
された副作用の少ない新しい治療薬となることが期待されます。
<安価な製造コスト=治療費の低下>
ボナック核酸は、一本鎖長鎖核酸であることを特徴としますが、従来から使用されているTBDMSアミダイト
(主要な核酸の合成原料)では、効率よく製造することができず、安価に高純度で大量に合成するには
高性能なアミダイトが必須となります。EMMアミダイトは、核酸合成における縮合効率および製造価格が
格段に改善されており、長鎖核酸オリゴマー(比較的分子量が低い重合体)でも安価に高品質で製造
することが可能です。
なお、ボナック核酸に関する技術は既に、PCT国際特許出願を完了し、日本国内では特許査定が得ら
れております(米国・欧州では各国移行審査請求済み)。(図等はPDFを参照してください)
日本独自のRNA干渉法を用いた分子標的核酸医薬 産学連携ベンチャー設立で開発・臨床応用へ
〜糖尿病網膜症に対する治療薬の開発〜
東京医科大学お知らせ 2012年4月19日
http://www.tokyo-med.ac.jp/news/kakusaniyaku.pdf 【発明の名称】遺伝子発現制御のための1本鎖核酸分子、含窒素脂環式骨格を有する一本鎖核酸分子
株式会社ボナック新着情報 一本鎖RNA干渉法に関する特許査定のお知らせ 平成24 年4 月吉日
http://www.bonac.jp/20120415448.html >>2辺りに続く
日本独自のRNA干渉法を用いた分子標的核酸医薬 産学連携ベンチャー設立で開発・臨床応用へ
〜糖尿病網膜症に対する治療薬の開発〜
概 要
国立大学法人九州大学(総長 有川 節夫、以下「九州大学」)、東京医科大学(学長 臼井正彦)
および株式会社ボナック(代表取締役社長 林宏剛、以下「(株)ボナック」)は、RNA干渉法を用いた
核酸医薬に関する研究開発を進めてきました。
これまで大きく期待されながらも、様々なハードルにより世界的に進んでいなかった核酸医薬ですが、上記
三者により、日本独自の核酸医薬に関する新しい基盤技術を確立するに至りました。これを機に、眼科
領域に特化した、新しい分子標的核酸医薬の開発と臨床応用を本格的に進めるために、本年3月19日に、
株式会社アクアセラピューティクス(代表取締役社長 吉川寿徳)を福岡市に設立いたしました。
まずは、糖尿病網膜症に対する新しい分子標的であるペリオスチン遺伝子をターゲットとする核酸医薬の
開発を目指します。糖尿病網膜症は進行すると失明の惧れがあり、患者本人のみならず家族や社会的
にも大きな負担となっており、新しい分子標的核酸医薬の開発が福音となることが期待されます。
背 景
RNA干渉は、特殊なRNA(二本鎖短鎖RNA、siRNA)を介した、mRNA(タンパク質合成で重要な役割を
果たす遺伝子)の発現を抑制する現象で、広く生命体に備わる生体反応機構として、2006年度のノーベル
生理学医学賞の受賞テーマとなりました。RNA干渉医薬は、この生体機構を利用し人工的に二本鎖RNAを
導入することで、任意の遺伝子の発現を抑制し、病気の原因となるタンパク質の産生を妨げることで様々な
疾患を治療しようとする手法です。
核酸医薬は、従来の低分子医薬品や抗体医薬などとは全く異なる作用機序を有することから、これまで
治療が困難とされている、がん、遺伝性疾患、その他インフルエンザやウイルス感染症などへの適用が期待
されています。また、核酸医薬のメリットの一つに、抗体医薬とは異なり、標的分子の同定から臨床試験開始
までに要する期間が格段に短いことが挙げられます。さらには、医薬品(特に原薬)の製造に要する設備は、
抗体医薬に比較して単純で小規模であり、設備投資額も含め、安価に製造することが可能です。つまり、
核酸医薬は、低分子医薬品の容易な製造性を持ちつつ、抗体医薬の有効性と安全性を凌駕する可能
性を秘めた、次世代の創薬技術として期待されています。
しかし、製品として販売されている核酸医薬は世界で1つのみで、多くは臨床開発の難しさに阻まれています。
その主な原因は、主要な技術特許が特定の企業により独占されていることで、特に日本国内での医薬品
開発は遅々として進んでおりません。また核酸分子自体の生体内での安定性や、自然免疫応答の亢進に
よる副作用への懸念、さらには、適切な薬物送達技術がハードルとなり、欧米でも医薬品開発は思うように
進んでおりませんでした。
経 緯
こうした状況のなか、(株)ボナックは、日本独自の核酸医薬に関する新規基盤技術として、上記課題を克服
可能な一本鎖長鎖RNAである「ボナック核酸」を開発。この度、本年3月に特許査定を取得しました。また、
医薬品としての品質・コストに耐え得る原料製造技術、更には、安定同位体核酸を用いた薬物動態法を
有する技術も開発しました(添付資料参照)。
九州大学大学院医学研究院眼科学分野 石橋達朗教授らは、核酸医薬を用いた画期的な糖尿病網膜症
治療薬の開発につながる新たな疾患因子として、ぺリオスチン蛋白を独自に同定し、これを新たな標的分子と
して見出しました。
東京医科大学分子病理学講座 黒田雅彦主任教授らは、従来の二本鎖核酸分子に致命的な副作用と
して問題となっている自然免疫応答を、ボナック核酸は回避可能であることを見出し、新規な加齢性黄斑
変性症治療薬開発に関する技術を開発しました。
これら三者の技術を結集し、核酸医薬の開発および臨床応用に進むべく、この度、(株)アクアセラピュー
ティクスを設立するに至りました。同社には、上記三者が、取締役および科学諮問委員(SAB)として会社
運営に参画し、それぞれに開発してきた特許技術を株式会社アクアセラピューティクスへ技術移転することで、
これまで有効な治療薬がなかった様々な眼疾患に対し、日本初の核酸医薬品開発を目指します。まずは、
糖尿病網膜症の治療薬として2013年10月を目途に前臨床試験、2015年初旬での臨床試験開始を
計画しております。
>>3辺りに続く