【幹細胞】注射でマウスの“若返り”に成功 正常な幹細胞から分泌される物質が年老いた幹細胞の欠陥を改善する可能性

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幹細胞注射でマウスの“若返り”に成功
Christine Dell'Amore for National Geographic News
January 10, 2012

 筋肉由来の「幹細胞」を注射すると、年老いたマウスが再び“若返る”可能性が明らかになった。幹細胞は、
体のあらゆるタイプの細胞に分化できる細胞である。

 アメリカ、ペンシルバニア州ピッツバーグにあるマクゴーワン再生医療研究所の幹細胞専門家ジョニー・
ユアール(Johnny Huard)氏によると、老化が早く進む状態にした高齢のマウスに若いマウスの筋幹細胞を
注射すると、寿命が3倍に延びたという。ユアール氏は、「自分でも最初は信じられなかった」と話す。

◆“疲れた”幹細胞が活性化

 実験に使われたマウスは前もって、人間の難病「プロジェリア症候群」(早老症の一種で、子どもが急速に
老化して若いうちに亡くなる病気)と似た状態になるよう遺伝子操作されている。

 早老状態のマウスは誕生して約21日で死ぬ。通常の寿命2年と比べ、かなり短い。研究チームは早老マウスの
筋幹細胞の調査中に、分化の遅い「疲れた状態」の幹細胞を発見。次に健康なマウスを調べると、同様の
欠陥が認められる幹細胞が見つかったという。

 これらの幹細胞が老化に関係しているか確認するため、約4日後に死ぬと予測されている早老マウスに、若い
健康なマウスの幹細胞を注射した。

 驚いたことに、注射したマウスの寿命は平均で71日間と大幅に伸びた。予測寿命21日より50日も長く、
人間に例えると80歳の老人が200歳まで生きたことになる。また、長生きしただけでなく、以前より健康に
なっていたという。

◆謎の分泌成分で細胞が“若返る”

 チームは実験を繰り返して結果を検証したが、幹細胞が実際にどのような働きをしているのかわからなかった。

 そこで、早老マウスに遺伝子マーカーでマーキングした幹細胞を注射、体内での移動を追跡した。「幹細胞が
臓器の組織を修復する」という仮説を立てたが、意外にも、マウスの臓器内では数個の幹細胞しか見つからなかった。

 次に、「幹細胞は何らかの“アンチエイジング物質”を分泌している」というアイデアを検証してみた。

 フラスコの一方の側に早老マウスの幹細胞を、もう一方に通常の若いマウスの幹細胞を入れた。両サイドは
細胞同士が接触しないように膜で分離されている。

 数日後、早老マウスの幹細胞は“若者”のように振る舞い始めた。つまり、分化のスピードが速くなったのだ。

「年老いた幹細胞の欠陥を改善する謎の物質が、正常な幹細胞から分泌されていると考えられる。その物質を
特定できれば、人間にとって重要なアンチエイジング効果のあるタンパク質を発見できるかもしれない」と
ユアール氏は語る。

(>>2以降に続く)

▽記事引用元 ナショナルジオグラフィック ニュース
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20120110001&expand#title
英語原文 Old Mice Made "Young"―May Lead to Anti-Aging Treatments
http://news.nationalgeographic.com/news/2012/01/120106-aging-mice-stem-cells-old-young-science-health/?source=link_tw20120110news-oldmice

▽画像 ハイイロシロアシマウスの亜種、セントアンドリュー・ビーチマウス
(学名:Peromyscus polionotus peninsularis)(資料写真)
http://images.nationalgeographic.com/wpf/media-live/photos/000/229/cache/news-mouse-tears_22908_600x450.jpg

▽Nature Communications掲載の論文要旨
Muscle-derived stem/progenitor cell dysfunction limits healthspan and lifespan in a murine progeria model
http://www.nature.com/ncomms/journal/v3/n1/full/ncomms1611.html