家畜への抗生物質投与、耐性菌出現の要因に 米学会
2011年09月19日 19:55 発信地:シカゴ/米国
【9月19日 AFP】成長を促進し疾病を予防するために家畜に与えられる薬剤が、抗生物質に
耐性を持つ菌が出現する主な原因になっている可能性がある―。米シカゴ(Chicago)で18日
に開催された第51回抗菌剤・化学療法学術会議(Interscience Conference on Antimicrobial
Agents and Chemotherapy、ICAAC)の年次会合で、微生物学者らがこのような発表を行った。
世界保健機関(World Health Organization、WHO)抗菌剤耐性統合監視諮問グループ
(Advisory Group on Integrated Surveillance of Antimicrobial Resistance)の
アワ・アイダラケーン(Awa Aidara-Kane)氏は大量の抗生物質を投与する行為について
次のように語った。
「この行為は、薬剤耐性菌の出現を促進する形で作用している。これらの薬物耐性菌は
汚染食品の消費や動物との直接接触、環境への拡大を通じてヒトに拡大する可能性もある。
さらに、薬剤耐性をもたらしている遺伝子は、人畜共通伝染病の病原菌からヒトの病気の
病原体に伝播する可能性もある」
■増える薬剤耐性菌
畜産物の消費による薬剤耐性菌の出現と拡散の危険性を低減するため、
WHOは動物の成長を促進させるための抗生物質の使用の制限や撤廃にも言及しており、
フルオロキノロン類や最新世代のセファロスポリンなどの人間の健康に不可欠な抗生物質
の動物への投与の制限を推奨している。
米疾病対策センター(US Centers for Disease Control and Prevention、CDC)の動物疫学者、
ベス・カープ(Beth Karp)氏は、「ヒトに感染したサルモネラ・ハイデルベルグ
(Salmonella Heidelberg)の間で、第3、第4世代のセファロスポリンへの耐性を持っている
ものが大幅に増えている」と指摘する。「2008〜2010年の間に薬剤耐性は8%から24%に
上昇した。小売りされていたニワトリから分離した株では、薬剤耐性を持つサルモネラ・
ハイデルベルグは2008年の17%から2009年には31%に増加した」。
この菌株は、ほぼすべての抗生物質に耐性がある。
カープ氏は、ほかのいくつかの血清型のサルモネラ菌がセファロスポリンへの耐性を
獲得する危険性についても懸念を示した。CDCによれば、非チフス性サルモネラは
米国の食品汚染の主要因で、毎年120万人が影響を受けている。そのうち2万3000人は
入院し、450人は死亡している。
■抗生物質の投与量減らすよう呼びかけ、米FDA
5月には、消費者団体が米食品医薬品局(US Food and Drug Administration、FDA)に、
家畜飼料への抗生物質投与が広く行われていることを批判し、この行為を止めるための
対策を強化するよう申し入れた。FDAは前年、細菌が薬剤耐性を獲得する危険性を
減らすため、抗生物質の投与量を減らすよう畜産農家に呼び掛けていた。
米アイオワ州立大学(Iowa State University)獣医学部の研究者、J・グレン・ソンガー
(J. Glenn Songer)氏は、若いブタなどの家畜に疾病をもたらすクロストリジウム・
ディフィシレ(Clostridium Difficile)菌の特定の菌株が、ヒトに感染する例が増えていると
指摘する。クロストリジウム・ディフィシは大半の薬剤に耐性があり、病院などでは深刻な
問題になっている。(c)AFP/Jean-Louis Santini
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▽記事引用元AFPBBNews
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2829128/7798791