◇生体肺区域移植目指す 岡山大病院・大藤准教授ら
重い肺の病気に苦しみながらも、サイズなどの問題から移植の機会が巡ってこない幼児らを
救おうと、岡山大病院呼吸器外科の大藤剛宏准教授らのグループが、成人の肺下部(下葉)
の一部だけを切り取って行う特殊な「生体肺区域移植」の研究に取り組んでいる。
年内にも動物実験に着手し、早期の臨床応用を目指す。
ヒトでの症例はなく、実現すれば世界初。
肺移植は現在、脳死と生体で実施。原則として、脳死はドナー(臓器提供者)から提供された
肺全部を、生体は成人の身内2人がドナーとなり、それぞれの下葉を取り出して移植する。
しかし、幼児らの場合は成人の肺は大きすぎるため手術ができず、同年代でサイズが合う
脳死ドナーからの移植が最適とされてきた。
大藤准教授が構想する「区域移植」は成人2人の下葉上部(肺全体の数%)を切り取って
幼児らに移植する手術方法。サイズの問題をクリアできる上、20%の肺を取り出す成人間の
生体移植よりドナーの負担も軽くなるという。
大藤准教授らは呼吸器外科医ら10人で研究チームをつくり、年内にも動物実験に着手する方針。
ただ、術後は患者の体が大きくなる一方で、肺自体は成長しないため、将来的には脳死による
再移植が必要になる。
改正臓器移植法の全面施行(2010年7月)で15歳未満の小児も脳死臓器提供が可能と
なったが、これまでに現れた小児ドナーは関東甲信越地方の病院で4月12日に脳死と判定
された少年(10歳以上15歳未満)のみ。親の心情や虐待の有無の確認など、さまざまな面で
成人より壁が高く、関係者の間では提供事例は限られるとの見方が強い。幼児には肺移植の
機会がほとんどないのが現状だ。
大藤准教授は「法改正で幼児に関する相談は増えているが、救う方法がなかった。
手法を早く確立させ、小児患者や家族に希望を与えたい」としている。(2011/5/5)
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▽記事引用元 山陽新聞 岡山医療ガイドβ版
http://iryo.sanyo.oni.co.jp/hosp/h/055/c2011050509592060 図:幼児向け「生体肺区域移植」
http://iryo.sanyo.oni.co.jp/contents/images/256/c2011050509592060_1.jpg