Brian Handwerk
for National Geographic News
April 14, 2011
最初期の肉食恐竜類とティラノサウルス・レックスのような進化した恐竜との間の空白を埋める新たな
恐竜が発見された。
ニューメキシコ州ゴーストランチで化石が見つかったこの原始的な恐竜は、約2億500万年前に生息していた。
体高は大型犬ほどで、頭骨の形が非常に変わっていると、論文の共著者でワシントンD.C.にある国立自然史博物館の
古脊椎動物学者ハンス・ディーター・スーズ氏は説明する。「前頭部は厚みがあって短かく、大きな前歯がある。
このような頭骨の肉食恐竜がこれほど古い時代に出てくるとは、まったく予想していなかった」。
これらの特徴から、発見された恐竜にはギリシャ語で「出っ歯の悪霊」を意味する
ダエモノサウルス・カウリオドゥス(Daemonosaurus chauliodus)という学名が付けられた。
知られている最古の恐竜類は、2億3000万年ほど前の三畳紀に現在の南アメリカに生息していた。
その中には、獣脚類と呼ばれる二足歩行の肉食恐竜の初期種も含まれていた。しかし、この時期の直後から
化石記録に大きな空白の期間があり、多くの専門家は初期の獣脚類は単純に絶滅したのではないかと考えてきた。
スーズ氏はこう説明する。「この考え方は、早い時期に恐竜は多くの種に分かれていたが、やがて絶滅し、
三畳紀後期になって、より進んだ肉食恐竜が取って代わり、さらに三畳紀からジュラ紀への移行期に多様な
種に進化したというものだった。この時期に肉食恐竜が非常に多くの種に分かれ、巨大化していったことは
分かっている」。
ダエモノサウルスの発見は、前後2つの恐竜群をつなぐものとなる。「今回発見された恐竜と、
同じ場所から数年前に見つかった恐竜は、これらの最古の恐竜類の中に獣脚類の祖先がすでに含まれていて、
それが三畳紀の終わり頃まで生き延びたことを示している」。
現在のところ、ダエモノサウルスの化石で見つかっているのは頭骨と頸椎だけだ。しかしその化石から、
最初期の恐竜と、進化して登場する次の肉食恐竜群である新獣脚類(neotheropods)との間の進化上の空白を
埋める特徴がいくつか分かっている。例えば、脊椎内に呼吸器系とつながった空洞があることなどだ。
もう1つ、この恐竜がニューメキシコ州で見つかった点も興味深いとスーズ氏は言う。「最初期の恐竜が、
まだ超大陸のパンゲアが存在し、陸上を歩いて移動できた時代に北半球に広がったということは、
漠然と考えられてきた。しかし、化石記録が見つかるのは南アメリカに限られていた。今回の発見で、
恐竜の最初の放散がもっと広範囲に及んでいたという証拠が1つ積み重なった。化石がアルゼンチンと
ブラジルでしか見つかっていないのは、発掘が不十分だったからなのだ」とスーズ氏は述べた。
新発見の恐竜については、4月13日発行の「Proceedings of the Royal Society B」誌に掲載されている。
Illustration by Jeffrey Martz
▽画像 発見された恐竜ダエモノサウルス・カウリオドゥス(Daemonosaurus chauliodus)の想像図。
http://www.nationalgeographic.co.jp/news//bigphotos/images/04132011-new-dinosaur-species-2_34543_big.jpg ▽記事引用元 National Geographic(April 14, 2011)
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20110414002 ▽Proceedings of the Royal Society B
「 A late-surviving basal theropod dinosaur from the latest Triassic of North America」
http://rspb.royalsocietypublishing.org/content/early/2011/04/05/rspb.2011.0410.full?sid=fb49ea18-a0f7-47dd-a43d-2a7f198b5e1b