アルファリズムが強いほど睡眠妨害が生じやすい
雑音などの妨害による目覚めやすさに、脳リズムが影響を及ぼしていることが、
米マサチューセッツ総合病院(ボストン)の研究チームにより明らかにされた。
今回の研究では、ボランティア13人を対象に、同病院の睡眠検査室で眠っている
(または少なくとも眠ろうとしている)状態でコンピューター脳波検査(EEG)を三晩実施した。
夜間を通して、間隔を置いて何度も交通音や電話の音などの典型的な背景音に10秒間曝露させ、
徐々に音を大きくしながら、EEGにより睡眠が妨害されたことが示されるまで繰り返した。
その結果、α(アルファ)シグナル(α波)の強さによって睡眠の妨害されやすさを予測することができ、
αシグナルが強いほど妨害の影響を受けやすいことが判明した。
研究著者のScott McKinney氏は「αリズムが単に睡眠と覚醒の移行を示すマーカーであるだけでなく、
睡眠の安定性に関する豊富な情報を含んでいることが突き止められた」と述べている。
また、今回の知見は、睡眠が隔絶された状態の進行ではなく、睡眠の深さは連続した
ものであることを示すものであるとして、睡眠状態のリアルタイム追跡や、直接脳に接続する
睡眠誘導システムの可能性についても期待を示している。
研究は、オンライン科学誌「PLoS One」に3月3日掲載された。
αリズムは100年近く前に発見され、かつては睡眠が始まると消失すると考えられていたが、
スペクトル分析と呼ばれる技術により、EEGでは見つからない睡眠中のαリズムのわずかな
変動も検知することができるようになった。
筆頭著者である睡眠医学科のJeffrey Ellenbogen博士は「この知見は将来的に、必要なときだけ
薬物やその他の治療法を用い、それ以外は脳リズムを自然のままにまかせる睡眠治療につながる
可能性がある」と述べるとともに、「αリズムと睡眠の脆弱(ぜいじゃく)性がどのように関連しているかを
より詳しく解明できれば、雑音などの妨害に直面した際に睡眠の完全性が維持可能な因子を知ることができる」
としている。
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▽記事引用元 日経電子版 いきいき健康
http://health.nikkei.co.jp/hsn/hl.cfm?i=20110310hk001hk ▽関連
PLoS One
Covert Waking Brain Activity Reveals Instantaneous Sleep Depth
http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0017351