大阪大大学院医学系研究科(大阪府吹田市)の不二門尚(ふじかどたかし)教授(感覚機能形成学)、神田寛行助教らの研究グループは、
網膜の異常で失明した「網膜色素変性症」の患者の網膜を、微弱電流で
刺激し、視力を回復させることに成功した。
6人中5人で効果が確認され、目の代わりとなる小型カメラでとらえた
光の動きを追うことができた人もいた。国内で「人工視覚」の成功例は初めて。
不二門教授は「数年以内につえなしで歩けるようにしたい」としている。
目の構造をカメラに例えると、角膜、水晶体がレンズ、網膜がフィルムにあたる。
健康な人が見た映像は、電気信号に変換され、網膜、視神経を経て
脳の視覚野に送られ、「見える」ようになる。しかし、網膜色素変性症に
なった人は、網膜の視細胞が徐々に消失するため、信号が視覚野へ
届かなくなって光を失っていく。
不二門教授らは、患者の網膜の外側の強膜の中に、刺激電極の
チップ(7ミリ・メートル四方)を装着。チップから微弱電流を流し、
眼球内に埋め込んだ帰還電極にあて、返ってきた電流で網膜内に
わずかに残った神経細胞を刺激する方法を考えた。
2005年秋と08年春には、計4人にチップを装着。手術中の
わずかな時間に光の刺激を与えたところ、3人が光の方向を判別できた。
今年4〜7月には、失明して10年以上になる女性2人に1か月間
チップを装着しCCDカメラをおでこにつけてもらった。
カメラで取り込んだ画像情報は、体外の装置で電気信号に変換され、
体内装置を経て、強膜内のチップに送られた。
千葉県の女性(67)はパソコンの黒い画面上に不規則に現れる
白色の棒をカメラで見て、位置を指さすことができた。
女性は「闇の世界でしたが、白い光がはっきり見え、棒の位置を
追えました。光が見えるというのは素晴らしい」と話す。
パソコンの画面上に現れる白色の棒の位置を指さす失明した女性
http://www.yomiuri.co.jp/photo/20101204-065912-1-L.jpg 不二門教授らによる人工視覚システム
http://www.yomiuri.co.jp/photo/20101204-065883-1-L.jpg ▽記事引用元 : 2010年12月5日03時02分 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20101204-OYT1T00970.htm