50歳未満で発症する遺伝性の若年性パーキンソン病に関わる新しい遺伝子を、
東北大加齢医学研究所の今居譲准教授(分子遺伝学)らの研究グループが発見した。
人間と同じ遺伝子を持つショウジョウバエを使って、新遺伝子の機能を解明。
新遺伝子の働きを制御することで、パーキンソン病の発症を抑えることも期待できるという。
若年性パーキンソン病の原因遺伝子「ピンクワン」と「パーキン」は、
細胞内でエネルギーを生産するミトコンドリアの機能を調整する。しかし両遺伝子に傷がついたり、
なかったりすると、ミトコンドリアの性質が変異。脳の神経が正常に働かなくなり、運動障害などが起きる。
今居准教授らはピンクワンに変異のあるハエと、ピンクワンのないハエを掛け合わせ、子の遺伝子を分析。
ミトコンドリアの変化に関わる遺伝子「PGAM5」を突き止め、ピンクワンに異常があっても、
PGAM5を取り除けば症状が改善されることも分かった。
ピンクワンがないハエは30日後には8割以上で羽に異常が現れたが、
ピンクワンとPGAM5がないハエでは、異常は1割程度にとどまった。
寿命も20日から45日ほどに伸び、羽の筋肉の変異も改善されていた。
パーキンでも同様の実験を行ったが、症状は改善されなかった。
今後、PGAM5、ピンクワン、パーキンが相互に果たしている役割について研究を進める。
国内の推定15万人のパーキンソン病患者のうち若年性は5〜10%。
残りは詳しい原因が分からない孤発性(非家族性)とされる。
今居准教授は「孤発性もミトコンドリアの機能が落ちて発症する。
機能調整に関わるPGAM5の作用を調節することで、孤発性の予防につながる可能性がある」
と話している。
京都大や東京大などとの共同研究。成果は2日(米国時間)、米オンライン科学誌に掲載された。
[若年性パーキンソン病]脳の神経の変性、脱落などで神経伝達物質のドーパミンが不足し、
手足の震えや歩行障害などが起きるパーキンソン病のうち、若年性は50歳未満で発症し、
遺伝性が多いとされる。遺伝性ではない孤発性は50〜60代に発症が多いため、若年性と呼ばれる。
治療はどちらもドーパミンを補う薬物療法が中心。
▽記事引用元 河北新報(2010年12月04日)
http://www.kahoku.co.jp/news/2010/12/20101204t15019.htm ▽プレスリリース
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/press20101203_01.pdf ▽PLoS Genetics
「The Loss of PGAM5 Suppresses the Mitochondrial Degeneration Caused by Inactivation of PINK1 in Drosophila」
http://www.plosgenetics.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pgen.1001229