東北大学、耐熱性に優れる低融点Ge−Cu−Te系相変化メモリ材料を開発
低消費電力と長期信頼性に優れる相変化メモリ材料の開発
−不揮発性相変化メモリへの応用を目指す−
東北大学大学院工学研究科知能デバイス材料学専攻の須藤祐司准教授、
小池淳一教授、(齊藤雄太、鎌田俊哉、隅谷真志各大学院生)らのグループは、
耐熱性に優れる低融点Ge−Cu−Te系相変化メモリ材料の開発に成功しました。
この成果によって、相変化メモリの欠点であるデータ書換消費電力を低減できるだけでなく、
高温環境下でデータが消失してしまう問題を解消できます。
1.背景
フラッシュメモリに代表されるように電源をオフしてもデータが保存される不揮発性メモリが幅広い分野で利用されております。
近年、デジタルカメラ、音楽プレーヤー、携帯電話等のモバイル型電子機器の急速な市場拡大に伴い、
フラッシュメモリ等の半導体メモリの高速化、大容量化が強く期待されています。
最近、高速のデータ書換が可能な次世代型の不揮発性メモリとして、相変化材料を用いた
相変化メモリ(PCRAM)が注目されています。次世代不揮発性メモリの他の候補には、
MRAM(磁性体メモリ)やFeRAM(誘電体メモリ)などが挙げられますが、PCRAMは構造が
単純であるため、製造コストや集積度の面で有利とされております。
相変化材料とは、アモル1ファス相⇔結晶相間の可逆的な変化が可能な材料であり、
DVD−RAMなどの光記録媒体に用いられています。
PCRAMは、相変化材料のアモルファス相/結晶相間の電気抵抗差を利用します。
相変化材料にパルス電流を流し、融点以上にジュール加熱してアモルファス化させることにより
リセット状態「0」とし、また、結晶化温度以上融点未満の温度にジュール加熱して結晶化させることにより
セット状態「1」として情報を記録します。
現在、光記録媒体で実績のあるGe−Sb−Te系化合物がPCRAM用の相変化材料として盛んに研究開発されています。
しかしながら、融点が高い(約620℃)ためデータを書き込む時に必要な消費電力が高く、
また、結晶化温度が低い(約160℃)ためアモルファス相の耐熱性が低く、
85℃程度の高温の環境に長時間置かれるとデータが消えてしまうという問題があります。
International technology roadmap for semiconductorによれば、2011年以降は、
CRAMデバイスの作動保証温度は、125℃で10年と目標設定されており、将来的にはPCRAMを
自動車分野など高温環境下においても適用する事が期待されています。
2.研究成果概要
今回開発した相変化材料は、Ge、CuおよびTeからなる化合物であり、融点は520℃程度でありながら、
約240℃の高い結晶化温度を持っています。また、アモルファス相の耐熱性を評価した所、
170℃で10年間の保持が可能であり、Ge−Sb−Teアモルファス相に比して極めて耐熱性に優れています。
本Ge−Cu−Te系相変化材料は、既存のGe−Sb−Te系よりも融点が100℃程度低く消費電力を低減できると共に、
125℃以上の環境下でも10年間データを保持できるため、高速USBメモリなどばかりでなく、
自動車分野など高温環境下で使用できる不揮発性相変化メモリを実現できます。
今後、相変化メモリデバイスを作製し、書換速度など相変化メモリとしての性能を検証していきます。
尚、本研究成果は、2010年11月25日より開催される相変化記録研究会シンポジウム
(開催場所:熱海KKRホテル)にて発表する予定です。
▽ ソース 日経プレスリリース
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=267199&lindID=1 ▽ 参考 「相変化メモリはNANDフラッシュに勝てない」、Numonyxが断言
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/event/20090625_296549.html