◇超小型衛星の一括試験施設、九工大で世界初稼働へ
国内外で開発が盛んになっている超小型衛星について、温度変化や振動など宇宙空間で
必要な耐性試験を1か所で行う世界初の施設が、10月から九州工業大(北九州市戸畑区)
で稼働する。
これまでは、試験の内容によって国内外各地の施設を回らなければならず、
時間や費用面で大きな壁になっていた。同大は「研究者の負担を低く抑え、
信頼性の高い試験で宇宙工学の進歩に貢献したい」と意欲を見せている。
九工大は1999年、小惑星探査機「はやぶさ」の太陽電池パネルの耐久試験を担当
して以来、衛星試験の実績を重ねてきた。鹿児島大などが開発し、5月に打ち上げられた
超小型の大気水蒸気観測衛星「KSAT」(ハヤト)についても、真空状態での動作確認や
打ち上げ時などに生じる振動の試験を行った。
しかし、九工大では衝撃試験や宇宙空間で発するガスの測定などは行えず、
鹿大チームはほかにも複数の研究施設にKSATを持ち込むほかなかった。
近年、大学や企業などが独自に超小型衛星の開発に挑戦するケースが増えているが、
多項目の耐性試験をまとめて行える施設がないという課題に直面している。
そこで九工大は7月7日に「超小型衛星試験センター」を発足させ、約1億3000万円を投入。
真空状態を作り出す機器や150度から氷点下150度までの熱変化を繰り返す装置、重力の
4000倍の衝撃を加える装置など、9種類の設備を新たに導入する。
これにより、宇宙ゴミにぶつかった際の衝撃や、接着剤の気化などにより衛星が発するガスの
有無など、全部で約10項目の試験を一括してできるようになる。以前は1片30センチ以下の
衛星にしか適用できなかった試験も、設備の拡充で50センチまで対応可能になる。
KSATを開発し、次の衛星の製作にも取りかかっている鹿児島大の西尾正則教授(大気科学)は
「ひとつの施設で試験を行うことが可能になり、移動時間や手間を大幅に省ける。
研究者にとっては大変ありがたい」と期待を寄せる。
(2010年8月7日 読売新聞)
-------------
▽記事引用元
http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20100807-OYS1T00514.htm YOMIURI ONLINE(
http://www.yomiuri.co.jp/)配信記事