指定難病の潰瘍性大腸炎 新治療法へ道 浜松医大などが共同研究
2010年7月19日
厚生労働省指定難病(特定疾患)の潰瘍(かいよう)性大腸炎は、免疫細胞が分泌する
タンパク質の一つを増やすと大腸の粘膜を保護する物質が作られ、症状を改善できることが、
浜松医科大第一内科の杉本健助教(42)と米ハーバード大の共同研究で分かった。
杉本助教は炎症部分にだけ、このタンパク質を増やす方法も開発しており、
新しい治療法につながると期待される。
杉本助教は、自然に潰瘍性大腸炎を発症するマウスの大腸で、
タンパク質のインターロイキン22(IL−22)と結合する受容体が多く存在することを発見。
IL−22と大腸炎の関係に注目した。
実験でマウスの大腸のIL−22を増やすと、受容体と結合して細胞内にある
情報分子STAT3を活性化した。STAT3は、粘膜を保護する働きがある物質のムチンを作る
杯細胞を増加させ、できたムチンによって症状は改善された。逆にIL−22を中和することにより
STAT3を抑制すると、症状は悪化した。
杉本助教はこれらの実験からIL−22、STAT3、ムチンと、症状の関係を解明。
IL−22で症状を改善できることを示した。
潰瘍性大腸炎の治療法は現在、抗炎症剤や免疫抑制剤で炎症を抑えるのが主流。
これに対し、IL−22の働きを生かし、粘膜を保護することで症状を抑えるのは、
まったく新しい考え方だ。
IL−22は、腸以外では別の働きをしており、単に与えただけでは別の臓器に副作用が
出る恐れもあるが、炎症部分にだけIL−22遺伝子を導入する方法も開発した。
杉本助教は「ヒトでもマウスと同じであることを確認し、
遺伝子導入の倫理的課題を解決した上で、新しい治療法につなげたい」としている。
滋賀医科大大学院の安藤朗教授(消化器免疫学)の話
われわれもIL−22の発現が潰瘍性大腸炎の病変粘膜で増強していることを
見いだしていたが、IL−22が何をしているのか分からなかった。
この研究はIL−22の機能を明らかにしただけでなく、局所投与による効果を確認し、
将来の臨床応用への可能性を示した点が画期的だ。
潰瘍性大腸炎 大腸の粘膜に潰瘍などができる炎症性疾患。
国内の患者数は2008年度で約10万人と報告され、毎年約5000人増加している。
腸内細菌や、外敵から身を守る免疫機構の異常、食生活の変化などが関与すると
考えられているが、原因は不明。
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▽記事引用元
http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20100719/CK2010071902000133.html http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20100719/images/PK2010071902100081_size0.gif 中日新聞(
http://www.chunichi.co.jp/)配信記事