中国北東部で発見された約1億2500万年前の羽毛恐竜2体の化石を調査した結果、
羽毛恐竜は現在の鳥類も形無しの多様な形態の羽根を持っていたとする研究が発表
された。
この羽毛恐竜は、現在の鳥類の祖先と考えられるオヴィラプトロサウルス類の仲間で
あるシミリカウディプテリクスである。草食恐竜だった可能性が高く、初めて研究が発表
されたのは2008年のことだ。がっしりした顎はオヴィラプトロサウルス類のほかの恐竜に
似ていたが、2本の前突歯が異様に大きかった。
今回発見された2体は、ハトほどの大きさの生後1〜2年とみられる幼年期のものと、
アヒルほどの大きさの生後3〜4年の青年期のものだ。幼年期の化石にはリボン状の
短い羽毛が含まれていた。尾の羽根の長さはそれぞれ約4センチで、前足の羽根は
概して2センチに満たない。逆に、青年期は羽軸が幼年期より長く、尾の羽根は長さ
約35センチ、前足では典型的なもので約25センチある。
今回の研究の共著者で、北京にある中国科学院の徐星氏によると、今回の発見から、
羽毛恐竜の羽毛の形態は成長につれて現生の鳥類とは比較にならないほどの激しい
変化を遂げたと考えられるという。
現在の鳥類の場合、一生を通じて羽根は常に生え替わっているが、羽根が一斉に
異なる種類に変わるのは一生でただ1度、暖かな産毛が成鳥の羽根に替わるときだけだ。
幼年期のシミリカウディプテリクスは産毛で覆われていたと考えられているため、今回の
発見から、恐竜の羽毛の形態が少なくとも3段階の変化を遂げたのではないかと考えられる。
完全に産毛に覆われた状態、体毛と“リボン状”の羽根が混在した状態、体毛と長い羽根が
ある状態である。
今回発見された2点の化石のうち、青年期の長い羽根は現在の鳥類のものによく似ており、
飾りとしての役割を果たしたか、地上を走る際にバランスを取るのに役立ったと考えられる。
幼年期の方のリボン状の羽根は、ゴクラクチョウなどに見られる特殊な機能を持った羽根に
似ている。しかしこの化石に見られる種類の羽根は進化の過程で失われており、幼年期の
恐竜でどのような役割を果たしていたのかはわかっていない。徐氏によると、非常に平らである
ことから、体を温める効果があったとも考えられないという。
これらの“リボン”は飾りだったかもしれないが、「今の動物の場合、飾りに使われる羽根は
一般的に比較的遅い時期、つまり成体に成長してから異性をひきつけるために発達する。
幼年期にこの種の羽根が見られるのではつじつまが合わない。実に不思議だ」と徐氏は話す。
シミリカウディプテリクスが見せる奇妙な変化から、初期の鳥類と羽毛恐竜が、多様な形態の
羽根の用途をいろいろと試していたと考えられる。「それが後世になり、現在の鳥類に見られる
堅実な使い方に落ち着いたのだろう。羽根の変遷をたどると本当に不可思議な仕組みの羽根
が存在する」。
今回の研究は「Nature」誌オンライン版2010年4月29日号に掲載されている。
ソース:ナショナルジオグラフィック
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