■柔軟性・低コストに期待
「ピセン」と呼ばれる有機化合物にアルカリ金属を導入すると、超電導体になることを、岡山大学大学
院自然科学研究科の久保園芳博教授らの研究グループが発見した。有機化合物としては最高の絶対
温度(K)20度(セ氏マイナス253度)で超電導となることを実験で確認した。「今後は、さらに高い温度
で超電導になる有機化合物が発見される可能性が大きい」という。英科学誌「ネイチャー」(3月4日付)
に発表した。
ピセンは、炭素原子が6角形に結合したベンゼン環5個で構成される芳香族の有機化合物。本来は
電気を通さない絶縁体だが、久保園教授らは、結晶化したピセンにアルカリ金属のカリウム、ルビジウ
ムを導入し、7Kと20Kで超電導となることを確かめた。
有機系の超電導物質は1980年代に相次いで発見されたが、芳香族では初めて。有機系の超電導
物質は、超電導になる温度が銅酸化物系などに比べて低く、最近10年は新たな発見がなかった。
久保園教授は「ピセンは構造が非常に簡単で、超電導物質の探索では見過ごされていた。芳香族は
多くの種類があるので、新たな有機超電導体が見つれば、低コストで柔軟性や環境適応性に優れた超
電導材料として期待できる」としている。
ソース:MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/science/science/100308/scn1003080732007-n1.htm ★依頼338より
東大研究グループ、芳香族有機超伝導体の電子状態を解明 | エンタープライズ | マイコミジャーナル
http://journal.mycom.co.jp/news/2010/03/05/071/ 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻の青木秀夫教授と
東京大学工学系研究科物理工学専攻有田亮太郎准教授の
グループは、岡山大学理学部の久保園芳博教授のグループが
発見した有機超伝導体(芳香族炭化水素ピセン(picene))の結晶で、
超伝導転移温度20Kをもち、芳香族でありながら超伝導体で
あることを理論的に解析、電子状態を解明したことを発表した。
電子が2個ずつペアを組みながらボース・アインシュタイン凝縮した
ものが超伝導状態であり、普通は、電気伝導度の高い金属を冷やした
ときに起こる。一方有機物は、生体も構成しているが、普通は絶縁体で
あることが多く、金属的になるのは珍しく、実際、有機物の金属化を
達成した白川英樹博士はノーベル化学賞を受賞している。
無機物において超伝導が発見されたのは1世紀以上前の20世紀
初頭だが、有機物で初めて超伝導が発見されたのは、1980年と
比較的最近である。また、炭素系としても、グラファイトに金属を
挟んだ構造で超伝導が発見されたのは1965年であり(超伝導に
なる温度は現在の最高値で絶対温度で12K)、1991年には、
フラーレンというサッカーボール状の炭素分子の間にアルカリ
金属原子を挟んだ構造で約30Kという超伝導転移温度が谷垣勝己
博士(現東北大学理学部教授)により発見されている。
その後、一時的に新たな発見は滞るものの、2009年初頭に
岡山大学理学部の久保園芳博教授のグループによって、
芳香族炭化水素分子ピセンの結晶にアルカリ金属をドープする
ことで、有機分子系としては高い約20Kの転移温度をもつ超伝導が
発見された(久保園教授による報告は2009年9月の国際会議など、
論文は2010年3月4日版のNatureに掲載)。」
(以下はソースで)
http://journal.mycom.co.jp/photo/news/2010/03/05/071/images/012l.jpg ピセン分子。ベンゼン分子が5つ連なって構成される