大みそかの夜空に輝く“ブルームーン”
Andrew Fazekas
for National Geographic News
January 2, 2010
2009年の大みそか、世界中の夜空に“ブルームーン”が輝いた(日本では2010年の元日)。
新年を迎えるときにブルームーンになるのはおよそ20年ぶりのこととなる。
新年のうたげの最中、真夜中に見上げた空が晴れていれば、輝く満月が目に飛び込んできただろう。
同じ月に満月が2回ある場合、2回目の満月のことを「ブルームーン(blue moon)」という。
前回大みそかに現れたのは1990年のことで、次は2028年となる。
“ブルームーン”と呼ばれるが、実際に青色をしているわけではない。
英語の慣用句に「ごくまれに」を意味する「once in a blue moon」という表現があるため、
ひと月に2回満月が現れることの希少性からこの名称が広まったという。
アメリカのイリノイ州シカゴにあるアドラープラネタリウムの天文学者マーク・ハマーグレン氏は、
「大みそかにブルームーンが昇ったとしても、科学的に特殊な現象ではなく、
天文学的な重要性はまったくない」と話す。
「ただし、歴史について考えるきっかけとしては意味があるだろう。人類がいかにして天体の動きから
暦体系を作り上げてきたのか、これを機に知る人も増えるかもしれない」。
ブルームーンの定義は現在では「ひと月に2回目の満月」で通っているが、ほかにもさまざまな定義がある。
そもそも「ひと月に2回目の満月」というのも、実はある雑誌の間違いによって誕生したものなのだ。
数十年前、天文学の月刊誌「Sky & Telescope」が、
『メーン州ファーマーズ・アルマナック(Maine Farmer's Almanac)』という農作業用の
年間歴(農事暦)に出てくる“ブルームーン”という言葉を説明した。
しかし、その際に誤って「ひと月に2回目の満月」としてしまったのだ。
後年、1819〜1962年に発行された農事暦を詳細に調査したところ、
“ブルームーン”という言葉が実は異なる使われ方をしていたことが判明した。
満月はおおむね年に12回、毎月1回ずつ現れる。
月の満ち欠けの周期が暦上の1カ月とだいたい一致しているためである。
しかし、現在の暦年は実際には太陽を基準とした周期、つまり地球が太陽を1周するのにかかる時間を
1年としているため、月の満ち欠けの周期で太陽暦の1年を区切ることはできない。
したがって、暦上の1年間と月の周期とのずれにより、1年の間に“余分”な満月が現れることがある。
3年に1度ほど、満月が13回ある年ができるのだ。
農事暦では1年を3カ月ごとに4つの季節に分けた上で、1つの季節に4回満月が現れる場合に、
3回目の満月を“ブルームーン”と呼んでいたのである。
(
>>2-に続く)
▽記事引用元
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=95748549&expand NATIONALGEOGRAPHIC(
http://www.nationalgeographic.co.jp/)
☆ご依頼いただきました。
(
>>1の続き)
ハマーグレン氏は次のように話す。「太陽暦を基準とした“ブルームーン”という現象は、
それほど珍しいことではなく、特別な重要性はない。この言葉に重要性があるとすれば、
天体の動きと人間の発想の結び付きを示す点にある。
ひと月に2回満月が現れることを発見し、そこに何かしらの意味を持たせようとした。
昔から人間は、天文学に深い興味を抱いていたことがよくわかる」。
天文雑誌が間違いを犯す以前、“ブルームーン”という言葉は、月が実際に青色に見える現象を
指すのが一般的だった。非常にまれではあるが、一定の大気条件がそろうと発生する。
「山火事や火山噴火の後など、大気中に粒子状物質があふれると、月が青色に見えることがある」
とハマーグレン氏は説明する。
例えば1950年、カナダで大規模な山火事が発生して北半球一帯にその煙が広がった際に、
青色の月が観測できた。また、1980年、アメリカのワシントン州にあるセント・ヘレンズ山の
大噴火でも、大量の火山灰が上層大気に達し、月が青色に輝いた。
現在、フィリピンのマヨン山で地震が続いており、いまにも大噴火の恐れがあるが、
大みそかに現れた“ブルームーン”が青色に輝くことはなかった。
(引用ここまで)