浜松から宇宙へ 2年後にも産学連携で超小型衛星打ち上げ
2010年1月1日
浜松地域の大学と産業界が、連携して超小型人工衛星(マイクロサット)を独自開発し、打ち上げる。
地球の気象や自然現象を観測する衛星で、この地域のものづくりを支える広範な技術を
宇宙開発に生かすとともに、地上約400キロの周回軌道からとらえるさまざまなデータを共有し、
新産業の開拓につなげるのが狙い。早ければ2年後にも、宇宙航空研究開発機構のH2ロケット
に載せ「やらまいか(やろうじゃないか)」の気概を乗せた“浜松一号”が宇宙へ飛び立つ。
光産業創成大学院大学(同市西区呉松町)の瀧口義浩教授(51)=光応用計測工学=による
衛星搭載用望遠観測ユニットの開発プランが、昨秋、
文部科学省の2009年度超小型衛星研究開発事業に採択されたのがきっかけとなった。
事業に向けた産学交流の中で、観測データの有用性と、強い放射線や極低温、超高温に
さらされる宇宙環境に耐える技術研究のメリットから「衛星そのものの自主開発と打ち上げを」と
構想が発展した。H2ロケットの「相乗り衛星」に応募する形で、これまでに地元企業でつくる
宇宙航空技術利活用研究会(SAT研)の約10社が参加することが決まっている。
マイクロサットは大きさが50センチ立方で、構想では口径20センチの高性能望遠鏡を組み込んだ
観測ユニットを搭載する。太陽光発電パネルを電源に、周回軌道を回りながら地球を覆う雲や
風速の分布、気候変動に伴う森林植生や農業生産の変化、自然災害などを画像データでとらえる。
同大が開発中の望遠鏡をはじめ、心臓部となるカメラを浜松ホトニクス(同市中区)、
衛星の構造体を原田精機(北区)、画像処理をパパラボ(中区)が開発にあたるなど、
浜松地域の技術力を結集したプロジェクトとなる。
超小型のため、得られる画像の解像度は「ひまわり」などの気象衛星より劣るが
「ベース部分を市販品でまかなうことも含めコストを大幅に下げ、観測データの提供については
中小企業が利用しやすい価格に抑える」(瀧口教授)ことで、ビジネスチャンスのすそ野を広げたい考え。
地域の産業界による衛星打ち上げは、昨年1月の東大阪市の「まいど一号」がある。
ハイテク企業が集積した浜松地域の新たな挑戦に「“宇宙産業都市・浜松”の力を世界に
発信する絶好の機会。開発プロセスへの学生の積極参加も呼び掛けたい」と同教授。
衛星の名称は今後、公募する。
打ち上げまでには、宇宙環境と同一条件での試作機の耐用試験など課題が多いが、
研究会の代表を務めるシステム開発「アルモニコス」(中区)の秋山雅弘代表取締役は
「宇宙の夢が現実に近づいたのは、一緒に汗をかいてきた仲間たちの力。
浜松にとって大きな価値ある取り組み」と期待を込める。
■相乗り衛星■ H2ロケットの搭載能力に余裕がある場合、人工衛星や探査機に相乗させる
小型副衛星。50センチ立方以下、50キログラム以下が条件で、宇宙航空研究開発機構が
申請者の開発力や資金力を審査して候補者リストに登録し、打ち上げ時ごとに選定する。
▽記事引用元
http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20100101/CK2010010102000023.html 中日新聞(
http://www.chunichi.co.jp/)
超小型衛星と望遠観測ユニットのイメージ図
http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20100101/images/PK2009123102100120_size0.jpg