◇貝塚に新種カニ?
市民団体などが大阪湾で取り組んだ「生き物一斉調査」(大阪湾環境再生連絡会主催)で、
ヒライソガニ属の新種とみられるカニが貝塚市の近木川河口と兵庫県西宮市の甲子園浜の
2か所で発見された。干潟の生き物に詳しい大阪市立自然史博物館の山西良平館長は
「新種であれば、常識を覆す発見。市民参加の調査が学術的成果に結びついた好事例だ」
と評価している。
調査は、大阪湾の水環境の実態を知るため、市民団体や国などで作る連絡会が5〜6月、
神戸市垂水区から岬町まで総延長約120キロの区間にある人工海岸や河口15か所で実施、
14団体、計666人が参加した。
新種とみられるカニは、大阪芸術大短大部の福井康雄教授(海洋生物学)が約20年前、
和歌山県白浜町の田辺湾でヒライソガニの行動を研究中に初めて確認したが、
本格調査前に姿を消していた。
ところが、連絡会が昨年5〜7月に行った初調査で、甲子園浜で採取されたカニの一つが
この“幻のカニ”とみられることが判明。このため今年の調査には、福井教授も加わって
標本を採取、生態研究が本格化した。
研究で▽両脚やハサミに毛がある▽甲羅幅は約2センチで茶から灰色▽内湾に多く生息する
――など、ヒライソガニと異なる特徴があることが明らかになった。
現在、遺伝子調査で新種かどうかの最終確認をしている。
調査では、ほかにエビや貝類、植物など計533種を確認。
外来種のチチュウカイミドリガニが、西宮市から貝塚市まで6か所で生息し、
自生種を圧迫している現状も浮き彫りになった。
市民参加型の大規模な生き物調査は全国でもほかに例がないといい、
山西館長は「ありふれた種でも、将来姿を消す可能性がある。
記録の意味でも、調査を続けていくことが重要だ」としている。
(2009年12月5日 読売新聞)
▽記事引用元
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/osaka/news/20091205-OYT8T00064.htm YOMIURI ONLINE(
http://www.yomiuri.co.jp/index.htm)
生き物一斉調査で見つかった新種とみられるカニ(福井康雄教授提供)
http://www.yomiuri.co.jp/photo/20091205-313624-1-N.jpg