日頃からインターネットの検索エンジンを利用することが、認知症や記憶障害の予防に
つながるかもしれないという最新の研究結果が発表された。
普段、インターネットに縁のない複数の中高年者に毎日1時間ずつ利用させたところ、
2週間後には脳の主要部位で活動レベルが上昇していることが確認できたという。
今回の研究に参加したカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の神経科学者
スーザン・ブックハイマー氏はこう語る。「重要なのはインターネットそのものではなく、
新しい情報を探し出して触れることで、絶えず脳が刺激を受けるという点にある」。
研究チームによると、パズルや新しい趣味に没頭することにも同様の効果があるという。
ただ、これらと違い、インターネットには長時間利用してもなかなか飽きないという
特長があるとブックハイマー氏は話す。「ネットの先には無限の情報が存在する」。
実験は、55〜78歳の中高年者24人を半分に分けて行われた。検索を含めインターネットを
日頃からよく利用しているグループと、利用経験がほとんどないグループの2つである。
まず、対照基準を設定するため、両グループの被験者に実際には作動しないキーボードと
マウスを操作させながら、インターネット検索を行っているところを想像させる。
そのときの脳をfMRI(機能的核磁気共鳴画像法)でスキャンし、血流に基づく脳の活動レベルを
測定した。
その結果、利用経験がほとんどないグループの方が、短期記憶をつかさどる下前頭回と、
意思決定をつかさどる中前頭回という部位の活動レベルが低かったことがわかった。
続いて両グループの被験者に、「毎日散歩すると健康上どのような利点があるか」、
「最良のコーヒー豆を見つける方法は」などの設問を課し、2週間にわたって毎日1時間ずつ
Googleの検索エンジンを使って答えを調べさせた。
この実験後に各被験者の脳をスキャンしてみると、利用経験がほとんどないグループの
中前頭回および下前頭回の活動レベルが、もう一方のグループと同程度にまで
上昇していることがわかった。
研究チームは、インターネット検索を利用すると認知症の予防や認知低下の抑制に
効果があるのではないかとみている。
もっとも、この見解はまだ科学的に実証されておらず、こうした脳の活性化が一時的なもので
あるかも依然不明だという。ただ、今回の実験結果にも表れているように、
脳を活性化するためには、具体的な内容を問わず何かに打ち込んだり挑戦したりする
心構えが大切なようだ。
「新しい物事に関わって常に脳を活性化させておくこと。それができれば、どのような活動で
あっても認知能力の低下を防ぐ効果はあるだろう。その一つがまさにインターネットによる
情報検索なのだ」とブックハイマー氏は話している。
研究成果は10月中旬にシカゴで行われた北米神経科学学会の年次会合で発表された。
ソース:ナショナルジオグラフィックニュース
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=62941437&expand