木星のオーロラ、原因は衛星の磁気圏
Victoria Jaggard
for National Geographic News
September 18, 2009
太陽系最大の衛星を取り巻いている小規模な磁気圏が、木星の大気に大きな影響を
与えていることが確認された。木星の両極上空を舞い踊る“ハイパー・オーロラ”は、
その磁気圏が原動力となって発生しているという。
今回発表された研究では、木星と2つの衛星が織りなす相互作用がかつてないほど
詳しく解明されたが、このオーロラに関する発見もその1つだ。
2つの衛星とは、巨大なガニメデと火山活動の活発なイオである。
地球のオーロラは、太陽からの荷電粒子の流れ(太陽風)と地球大気の相互作用によって
発生する。しかし太陽と7億7857万キロも離れている木星のオーロラには、衛星が関与している。
衛星イオの火山群からは膨大なガスが放出されており、それが荷電粒子となって木星の
周囲にドーナツ状に滞留している。そしてその環の中をイオが公転することで生じる磁気波が
木星とつながり、それを伝って粒子が両極に流れていくのである。
一方、ガニメデは太陽系最大の衛星で、木星の強力な磁場の中にあっても自身を保護する
固有の磁場を維持することができる。この小規模な磁気圏がオーロラの発生に関わっている
のではないかと科学者たちは推測しているが、その関係性はまだ明らかになっていない。
木星の表面にはオーロラの“フットプリント”(足跡)と呼ばれる明るい点が存在するが、
それらはイオやガニメデの荷電粒子が自身の磁力線を伝って木星の大気に侵入する
場所だと考えられている。磁力線の根本には局所的に明るいオーロラが生じ、磁力線は
衛星の公転に伴って移動するため、フットプリントは極のオーロラの周囲を木星の自転方向に
筋を描くように現れる。
ベルギーにあるリエージュ大学の研究チームは今回、ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された
数千枚の画像を基に、両衛星のフットプリントの大きさを計測したほか、時間経過に伴う
フットプリントの変化と衛星軌道の関係性も調査した。
その結果、ガニメデの磁気圏とフットプリントが同サイズであることが判明し、
木星でのオーロラ発生に同衛星の磁気圏が関与していることが確認されたのである。
また、イオ起源の荷電粒子はエネルギーレベルが一定でないことも明らかになった。
つまり、一部の粒子は木星の上層大気に衝突してもエネルギーを使い果たさず、
大気の奥深くまで侵入できるということである。
「ハッブルが撮影したオーロラの構造をひとつひとつ調べると、木星から遠く離れて大規模な
エネルギー移動が起こっていることがわかる」と、研究に参加したデニス・グローデント氏は
話している。
この研究成果は今週、ドイツのポツダムで開催された2009年度欧州惑星科学会議で発表された。
▽記事引用元
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=10773652&expand NATIONALGEOGRAPHIC(
http://www.nationalgeographic.co.jp/index.html)
2007年5月にハッブル宇宙望遠鏡が撮影した木星の画像。南極付近に見えている明るい点は、
火山活動の活発な衛星イオに端を発する荷電粒子の流れの到達点(フットプリント)だ。
2009年9月に科学者が発表したところによると、木星最大の衛星ガニメデとイオはともに、
同惑星の両極上空を舞い踊る“ハイパー・オーロラ”の発生要因であるという。
Images courtesy NASA/ESA
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/bigphotos/images/090917-jupiter-auroras-moons-picture_big.jpg