◇感染症かかりやすさに男女差、大分大など世界初確認
感染症のかかりやすさに男女差があることを、
大分大と久留米大のグループが世界で初めて大規模な統計学的研究で明らかにした。
成人T細胞白血病の原因ウイルス(HTLV―1)の母子感染は男児のほうが起きやすい
ことを確認。インフルエンザなど他の多くの感染症も男の子のほうが多く、20歳を過ぎると
女性が上回るなど、年齢による共通の変化も見られた。生体防御力の違いと考えられ、
性差を考慮した感染症対策につながる可能性がある。女児のほうが育てやすいという
経験則とも関係しそうな結果で、臨床ウイルス学の国際誌に発表された。
HTLV―1感染は国内では西日本を中心に約100万人。主に母乳と性交渉で感染する。
感染者の大半は無症状で、長い年月を経て1000〜2000人に1人が白血病を発病する。
江島伸興・大分大教授(統計科学)らは1995〜98年に大分県で献血した27万人余りの
陽性率を年齢別に調べた。母乳感染がほとんどと考えられる15〜19歳の陽性率は、
男性(0・90%)が女性(0・56%)より高かった。20〜30歳代は差が明確でなく、
40歳代以上は女性のほうが高く、性感染が男から女へ起きやすいためと判断できた。
研究グループの岩田欧介・久留米大助教(小児科)は「HTLV―1は感染者が女性に
多いのに発病は男性に多い点が謎だったが、今回の結果から、男性の感染時期が
早いためではないかと推測できる」と言う。
一方、国内の感染症発生動向調査(2006年)から人口あたりの患者数を解析すると、
インフルエンザは20歳未満で男性がやや多い。しかし20〜60歳代は女性がやや多く、
70歳以上は再び男性が多くなる。
新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)も国内の感染者数は、
10代を中心に男性のほうがやや多い。
咽頭(いんとう)結膜熱、感染性胃腸炎、手足口病、おたふくかぜなど、子どもの感染症も
ほとんどは男児のほうが多く、15歳以上になると女性のほうが多かった。
MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)など主な院内感染菌や結核も男性に多い。
一方、マイコプラズマ肺炎は女性に多い。
江島教授は「新型インフルエンザなどの大流行に備えるためにも、なぜ防御力が男女で
違うのかは重要な研究課題で、感染メカニズムや防御対策を考えるカギになる」と話している。
(2009年7月10日 読売新聞)
記事引用元:YOMIURI ONLINE(
ttp://www.yomiuri.co.jp/index.htm)
http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20090710-OYS1T00705.htm グラフ:年齢層別に見たHTLV-T陽性率
http://kyushu.yomiuri.co.jp/photo/20090710-684133-1-N.jpg