アブラムシによる被害で針葉樹の枯死に悩まされている北米に向けて、
日本原産の甲虫が近く“天敵”として輸出されることが、昆虫学者らへの取材で分かった。
この虫は「米国の森を救う勇敢な虫だ」と米国研究者の間で期待されており、
「サムライ甲虫」と通称で呼ばれている。大阪で発見された新種であることから、
今年中にも「オオサカエンシス」(エンシスは場所の意)と正式に命名されるという。
この甲虫は、米国の研究者と大阪市立自然史博物館の初宿成彦学芸員が協力して平成17年に、
大阪府高槻市で発見。アブラムシを食べるマキムシモドキ科の新種の甲虫で、体長2〜3ミリ。
従来の同種より体が大きく、多くの卵を産む可能性があるほか、低温の環境に耐えることや、
針葉樹のツガに繁殖して被害をもたらしているツガカサアブラムシだけを食べることが明らかになった。
米バージニア工科大学のアシュリー・ラム研究員(在日研究中)らによると、北米では、
ツガは1980年代からツガカサアブラムシ被害で枯死が目立つようになり、
現在までに17の州で侵入が確認されている。このアブラムシは
白い袋状のワックスに包まれながら樹液を吸うため寒さに強く、主に冬に成長する。
米政府は90年代になって、駆除のための大規模な計画を立てて天敵探しを開始。
中国などでも調査したが、日本でツガカサアブラムシが生息しているにもかかわらず被害がないことから、
研究者を日本に派遣。90年代初めに、大阪府高槻市のツガの樹木でツガカサアブラムシを食べている
小さなテントウムシを発見し、米国へ約80匹持ち帰ったがツガ林内で繁殖することに失敗したという。
新種の甲虫は現在、米国への輸出に向けて実態研究をほぼ終了。
米国研究者の間では「サムライ甲虫」と呼ばれていたが、初宿学芸員らの研究グループが今年中にも
米国誌に投稿し、「オオサカエンシス」と命名する。初宿学芸員は「この新種は日本ならどこにでもいて
アブラムシをバリバリ食べる。“生物農薬”という形で米国でも期待できるのでは」と話している。
msn.(産経ニュース)
http://sankei.jp.msn.com/science/science/090715/scn0907152040006-n1.htm 北米の森を救うことが期待される「サムライ甲虫」。「オオサカエンシス」と命名される予定
http://sankei.jp.msn.com/photos/science/science/090715/scn0907152040006-p1.jpg