慶大先端生命科学研究所(山形県鶴岡市)と独立行政法人理化学研究所(神戸市)は27日までに、
マウスを使った共同実験で、血液の中身から「体内時計」が指す体の状態(体内時刻)を測定することに成功した。
世界で初めてという。健全な生活リズムと比較して、時差ぼけや睡眠・覚せい障害の状態に
陥っているかどうかの客観的な診断につながり、適切なタイミングで治療を施す「時間治療」に役立つという。
共同研究グループは、マウスの血液を4時間ごとに採取。代謝産物(メタボローム)解析を実施した結果、
約2500の成分のうち24時間周期で変動する500近い物質を突き止めた。
それを基にどの物質がいつ、どれくらいの量を示したかを表す「代謝産物時刻表」を作成した。
その表を基準に、任意の時刻に採取したマウスの血液成分を照らし合わせることで、
体内時刻を推定することに成功。実験では昼夜逆転の状態に置いたマウスが、徐々に新しい生活リズムに
順応していく様子が、メタボローム解析と代謝産物時刻表によって証明されたという。
研究グループは今後、ヒトの血液分析にも応用。正常な状態からズレが生じた体内時刻の正確な測定と
時間治療の充実につなげる考え。投薬などのタイミングも、その時の状態で変える
「個人に合わせた医療(テーラーメード医療)」に役立つという。
研究にあたった慶大先端生命科学研究所の曽我朋義教授は「不規則になりがちな現代社会で、
治療が最大限に効果を発揮する体の状態を知ることができる」と説明。
冨田勝所長は「さらに研究を進め、人類の健康に貢献したい」と話している。
(河北新報社)
http://www.kahoku.co.jp/news/2009/05/20090528t55036.htm