大地震で大破の懸念があるとされてきた世界遺産の国宝姫路城大天守は、
震度6強の揺れにも耐え得ることが、姫路市教育委員会などの最近の調査で分かった。
漆喰(しっくい)を塗り込めた城郭の壁が耐震に寄与。地盤も強固なためという。
四百年前に築城された近世城郭建築の最高峰は、十分な耐震性も備えていることが証明された。
今秋から始まる「平成の大修理」では、美観や世界遺産としての価値を損なわないよう、
耐震補強は最小限にとどめる方針。
大天守は高さ約四十六メートル。五層六階・地下一階。
財団法人「建築研究協会」(京都市)が大修理の事前調査を担当し、
二〇〇六年二月、「震度6弱以上で四階以上が激しく揺れて、柱が折れ壁が崩れる恐れがある」との結果を公表した。
その後、市教委の「姫路城大天守保存修理検討会」(会長・多淵(たぶち)敏樹(としき)神戸大名誉教授)が、
「昭和の大修理」(一九五六-六四年)に携わった金多(かねた)潔(きよし)京都大名誉教授を耐震の専門委員に迎え、
さまざまな角度から実験。事前調査結果を覆した。
建築研究協会は、仮定の数値から耐震強度を算出していた。
これに対し、市教委は京都府八幡市の実験場に、実寸大の漆喰壁を造って強度を調べた。
巨大装置を使って外から力を加え、柱、梁(はり)などの反応も検証。
最先端の耐震工学に基づいて解析したところ、
震度6強の揺れにも耐える構造であることが分かった。
また、姫路城は姫山と呼ばれる山の固い地盤に建つ。
近くの消防署の地震計が揺れを感知した時も、
大天守の地下一階と三、六階などに〇六年七月に設置された地震計は、
針が振れたことがないという。
多淵名誉教授は大修理について
「見栄えが悪くなるような補強は不要ではないか」と話している。
(坂本 勝)
記事引用元:神戸新聞(
http://www.kobe-np.co.jp/)
http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0001637549.shtml