免疫反応、抑制の仕組み解明
京大グループ、効果的がん治療に期待
体の免疫システムが暴走しないよう調節する制御性T細胞(Tregs)が免疫反応を抑えるメカニズムを、
京都大再生医科学研究所の坂口志文教授らのグループがマウスの実験で解明した。がんなどでの
効果的な免疫療法につながる成果といい、米科学誌サイエンスで10日に発表する。
Tregsは拒絶反応などを抑える免疫寛容で働く細胞で、坂口教授が見つけた。攻撃的なT細胞を抑える
ことで過剰な免疫反応の「ブレーキ」として働いている。Tregsがうまく働かないと免疫反応が暴走し、糖尿
病や炎症性腸炎、アレルギーなどの原因となる。一方、Tregsを弱めればT細胞の活性化につながるので、
そのメカニズムを使った免疫療法が研究されている。
坂口教授は、Tregsの表面にタンパク質CTLA−4ができないマウスが自己免疫疾患になる一方で、
皮膚に植えたがん組織が消えることを確認。また、「敵」の目印になる抗原をT細胞に提示する樹状細胞と
TregsがCTLA−4を介して結合すると、攻撃的なT細胞が樹状細胞に結合できなくなり、T細胞が活性化
されないことを実験で確かめた。
がん組織にTregsが入り込んで正常な免疫反応を抑えていることもある。CTLA−4を標的に、がん組織
内のTregsの機能を選択的に抑えることなどで、効果的な免疫療法が期待できる。坂口教授は「免疫反応
のメカニズムに基づいた効果的で副作用も少ない免疫療法の開発につなげたい」と話している。
京都新聞
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2008101000049&genre=G1&area=K00 CTLA-4 Control over Foxp3+ Regulatory T Cell Function
Science 10 October 2008: Vol. 322. no. 5899, pp. 271 - 275
DOI: 10.1126/science.1160062
http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/322/5899/271