独立行政法人理化学研究所は、植物の病原菌感染(生物ストレス)に対する
免疫機構である「全身獲得抵抗性(systemic acquired resistance:SAR)が
乾燥・塩害などの環境ストレス(非生物ストレス)によって弱められ、逆に全身
獲得抵抗性を既に獲得していると環境ストレスへの応答が低下するという、
複雑なストレス耐性制御機構を持つことを初めて明らかにしました。
理研基幹研究所仲下植物獲得免疫研究ユニットの安田美智子協力研究員、
仲下英雄ユニットリーダーと理研植物科学研究センター、公立大学法人
福井県立大学、国立大学法人東京大学などとの共同研究による成果です。
植物は、病原菌に感染すると、サリチル酸や抗菌性タンパク質などを体内に
蓄積し、病原菌の2次感染を抑制します。このサリチル酸をシグナルとする
抵抗性は全身獲得抵抗性と呼ばれ、植物独自の獲得免疫機構として盛んに
研究されています。
実際に、作物を病気から守る目的で、農業に活用されています。
研究チームは、乾燥、低温、塩害などの環境ストレスへの応答に重要な役割を
果たすアブシジン酸が、サリチル酸の合成遺伝子やシグナル応答遺伝子の
機能を低下させ、 SARの誘導を抑制して、結果として病原菌の感染に対する
抵抗性が弱まることを明らかにしました。
一方、SARが既に誘導された植物では、環境ストレスへの応答能が低下する
ことも見いだし、これら両者の間に相互抑制的なシグナルのクロストークが
存在することを突き止めました。
本研究結果から、植物が生物/非生物ストレスの両方を受けた時に生体内の
限られたエネルギーで効率よく適応するために、このような相互抑制的な
メカニズムを備えていると推定されます。
本研究成果は、米国の科学雑誌『The Plant Cell』(6月号)に掲載されるに先立ち、
オンライン版(6月27日付け:日本時間6月28日)に掲載されます。
なお、本成果は、『The Plant Cell』巻頭で編集者が紹介する話題の成果の1つと
して取り上げられます。
ソース:
http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2008/080628/detail.html 画像;
http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2008/080628/image/04.jpg 理化学研究所プレスリリース 2008年6月28日
【参考】
http://www.plantcell.org/cgi/content/abstract/tpc.107.054296v1 >>1 ただ単に複数の耐病機構間に資源のトレードオフがある、って話以上に、
ひとつの機構が発現してるときはそれに専念するため他の機構を
積極的に抑制する、という実例が見つかったってことでOK?