独立行政法人理化学研究所は、生物の発生過程で器官が形成される際に起こる
細胞の形態変化が、細胞内情報伝達タンパク質「RhoA」と細胞骨格タンパク質の
微小管により制御されていることを、発生初期のニワトリ胚を使った実験で明らかに
しました。
(略)
発生過程の胚には、2種類の形の細胞が存在します。1つは円柱状で細胞同士が
規則的にぴったりと接着し、シート状に並んでいる細胞(上皮細胞)で、もう1つは、
不規則な形態で運動性を持つ細胞(間充織細胞)です。
発生過程では、細胞が2種類の形態を相互に変化させており、これが正常な器官
形成に非常に重要であると考えられています。特に上皮細胞が間充織細胞へと
形態を変化させる現象は「上皮−間充織転換(EMT)」と呼ばれており、例えば、
原腸陥入という体の形づくりの基本となる現象において起こることが知られています。
研究チームは、生体内で起こるEMTの制御機構を解明するにあたり、ニワトリ初期胚の
原腸陥入に着目しました。また近年、細胞内で情報伝達に関わるRhoAタンパク質が、
原腸陥入に影響することが報告されていることから、RhoAの EMTに対する役割を
詳細に解析しました。
EMTは、上皮細胞の直下に存在する基底膜と呼ばれる構造が分解されることから
始まります。研究チームは、EMTを起こす前の上皮細胞において、RhoAが、細胞
形態を支える微小管という細胞骨格タンパク質を、細胞内の基底面で安定させて
基底膜を維持していることと、RhoAの消失が基底膜の分解に必要であることを
突き止め、生体内で起こるEMTの新規制御機構を細胞レベルで明らかにしました。
本研究成果は、形態形成の始まりである原腸陥入の理解に貢献するのみならず、
3次元環境下のEMTにおける基底膜分解の分子機構を明らかにした点で非常に
意義深いといえます。
さらにEMTは、がん細胞の転移などの病態にも関与することから、抗がん剤の開発に
役立つことも期待できます。
本研究成果は、英国の科学雑誌『Nature Cell Biology』オンライン版(6月15日付け:
日本時間6月16日)に掲載されます。
(ソース長文の為抜粋しました。詳細は以下のソースよりご覧下さい)
ソース:
http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2008/080616/detail.html 画像:
http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2008/080616/image/03.jpg 理化学研究所プレスリリース 2008年6月16日